「歯痒い、真実らしさの欠け」シン・ウルトラマン 阿呆さんの映画レビュー(感想・評価)
歯痒い、真実らしさの欠け
Z世代ながら、揺籃期にAを除くすべての昭和のウルトラマンを試聴した者の評価として、
【良い点】
❶外星人それぞれの知性と特性が光る。
殊に、光の星の人々の独立不羈の意志と、人類に肩入れをする主人公(通称、ウルトラマン)の人への憐憫は菩薩に通じるものがあり、分かっていても心打たれる。
❷怪獣やベータボックス点火器など、デザインが悉く秀逸。
ゼットンなどは『デザインワーク』で庵野氏が述べている通り、成田亨氏が影響されたというロシア構成主義を応用した、見事な造形である(頭部はどこかで見たような造りだが)
【悪い点】
❶あらゆる映像作品の根幹を成す「真実らしさ」(エイコス)に欠けているように感じる。
シン・ゴジラでは成功していた未確認巨大不明生物とそれに対応する人間社会の描写が、シン・ゴジラほど精緻でなく、映像がどこか宙に浮いている感じが否めない。専門用語は多用されているが、それだけでは作品にリアルさを肉付けすることはできないらしい。もちろんこの点は、庵野氏も『デザインワーク』のなかのインタビューで触れている(p74)
⇨これに関しては、CGの拙さも関係していると思われる。巨大化した際のCGの違和感は拭えなかった。
❷プロットが駆け足。
画面構成は良いのだが、やはり展開が早い。
外星人と同化した神永新二の抑揚のない声や表情と相まって、禍特対メンバーをはじめとする登場人物たちの機微が味わいにくい仕上がりとなってしまっていた点がじつに残念。
→禍威獣とザラブを操るメフィラスとの駆け引きを時間いっぱいじっくり見せてくれた方がよかったのかもしれない。
❸長澤まさみ氏演じる浅見弘子の描写が、現代の女性を取り扱うコンテクストにそぐわず、正直受け付けない。
「おじさんの悪い所」が出てしまっているように感じる。これは世代の問題等々あるかも知れない。我らの世代がより性を隔離し、同人誌やネット等に封じ込めているとも言える。「ポリコレ」を筆頭とする時代の趨勢は、確実に私の感性に根付きつつある。
ともかく、グローバルスタンダードにはそぐわないであろうことは確か。海外の友人には素直にすすめられない。
総括:
日本最高峰のクリエイターをもってしても、空想特撮ヒーローを、「真実らしく」受肉させることは難しいということに、改めて気付かされた。「怪獣」よりも「外星人」や「ヒーロー」のほうが、一層フィクションよりの存在ということも解り、別の角度で面白かった。