「もっと好きになったよ、ウルトラマン。」シン・ウルトラマン しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと好きになったよ、ウルトラマン。
ウルトラマン生誕55周年記念作品。
シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースの一編。
TOHO CINEMAS EXTRA LARGE SCREENで鑑賞。
終始、ウルトラマンへのオマージュに溢れており、
終始、ウルトラマンをカッコよく描いていました。
もうそれだけで、感無量…
まさしく、これぞ、リブート。
「ウルトラマン」の世界観を現代の視点で解釈し、見事なSF作品に仕上げた庵野秀明の脚本が見事すぎました。
名作エピソードをツギハギではなく、繋がりを持たせたひとつのストーリーに構築しているのも素晴らしかったです。
「シン・ゴジラ」の時のような早口のセリフ回しが踏襲されていたり、日本政府や諸外国との関係を風刺する部分も健在でしたが、同作には無かった人間ドラマでの情感やコミカルさがあり、差別化が図られていることに驚きました。
「ウルトラマンが人間を愛してしまう」と云う要素がストーリーの根本にあるために、感情が描かれなければ成立せず、全体的に「シン・ゴジラ」みたいな硬さは緩まっていました。
リアリティーのレベルを同作よりも落としてバランス調整を施し、オリジナルの「ウルトラマン」の世界観を壊さないような抜群の塩梅になっているなと思いました。
メリハリの効いたカメラワークもテンポの良さを引き立たせていて、ところどころやりすぎの感はあったものの、さすがは庵野・樋口ラインの演出の巧みさだな、と…
ゼットンをあのような形でウルトラマンと対峙させるとは予想外すぎて、まさに庵野秀明にしか思いつけないこと…
最終回の展開を昇華させて、高らかとした人間讃歌を歌い上げ、尚且つウルトラマンを再定義してしまうなんて…
ウルトラマンは神にあらず。我々と同じ、命あるもの…
縋るのではなく、彼と協力することで成し遂げた人類の勝利は、友情、そして協調の最たるもので、希望の光だな、と…
もっと好きになったよ、ウルトラマン。
そして、人類のことも…
[余談1]
ここからは特撮オタクの叫びとして徒然なるままに…
始まり方から胸アツで、声を上げたくなるのを必死で堪えました。なんと云う遊び心なのか…。オタクが作ってんなぁ、なんて感心して、琴線に触れて来る導入部の見事さにウキウキ・ワクワク!―劇伴も宮内國郎氏のものを使用して、あとは「シン・ゴジラ」の流用(またはアレンジ)と「エヴァ」風の劇伴の併用でまさに庵野ユニバース。ネロンガ登場からの…まさかの予告編フェイク!―やはり庵野秀明は心得ておりました…。ウルトラマンには、A、B、Cタイプとスーツのマスクデザインの種類があることを…。やっぱそうだよね、って感じ。
カラータイマーを無くしたことで、ウルトラマンの地球での活動限界をどう描写するのだろうと個人的に気になっていた点を、「まさかそう来るか!」と思わず膝を打ってしまった手法で行っていて、これはまさに「シン・ゴジラ」におけるゴジラの形態変化も斯くの如しなウルトラC。
その後も小気味良く小ネタ(明らかに巨大フジ隊員オマージュな長澤まさみの巨大化など)を投入し、まさかまさかのシークレット・キャストの登場で「マジか」と声が漏れてしまいました。周りの皆さんごめんなさい…
ゾフィー(本作ではゾーフィ)の登場は予想出来ていましたが、あのデザインはもしや、"ウルトラマン神変"…?―そうとしか思えませんでした。ここまで成田亨氏リスペクトとは!
そしてゼットンの使徒感にさらに庵野ユニバースを感じていると、その攻略法を探る人類の行動は「シン・ゴジラ」の最終局面を世界レベルに拡大した人間讃歌と希望を抱かせる庵野秀明ならではなクライマックスでした。
本作のキャッチコピーになっていたあの名ゼリフもちゃんと語られるべき者の口から発せられ、「ウルトラマン」最終回の先を行った展開と結末に圧倒されたところへ「M八七」。
エンドクレジットに或る方の名前を見つけて、なんのボイスキャストを担当していたのかとんと見当がつかなかったのでもう1回観なくちゃなぁ、なんて思っているとモーション・アクターに古谷敏の名前を見つけて猛烈に感動してしまった…
[余談2]
一般の視点に立つと、本作は「シン・ゴジラ」ほどの特大ヒットは期待出来ないのではないかなと思いました。
少々マニアックな方向に傾き過ぎているのではないか?―と感じたからです。ウルトラマンのファンなら大喜びだけれど、大衆受けするかと問われれば、うーむと唸ってしまう…
しかし視点を変えると、違った面が見えて来ました。
「シン・ゴジラ」味を期待すると、確かに肩透かしを食らうかも。リアル寄りの作劇なれど、同作のような重厚さはありませんでした。このライトさは寧ろ、特撮初心者にとっては優しい入門編として機能しているような気がしました。
それは本作のコンセプトである、「ウルトラマン」放送当時の衝撃を再現すると云うことに繋がって来そうだな、と…
本作で初めて本格的に「ウルトラマン」に触れた方にとっては、現代風にアップデートされたストーリーは古臭くない、面白いものに映ってくれるだろうし、そう願いたい…
同時に、リアルタイム世代(これは決してマニア、オタクに限定されない人たちを指す)には感じ取れるであろう懐かしさも随所に内包されているように感じられ、非常にニクいつくりになっている作品だなと思いました。
※以降の鑑賞記録
2022/06/03:庵野秀明セレクション "ウルトラマン"4K特別上映
2022/07/13:"ウルトラマン" メフィラス登場回付き特別上映(大阪SSC)
2022/11/18:Amazon Prime Video
コメントありがとうございます。
ひとつひとつのエピソードを、散発的でなく、設定に無理の無い繋がりを持たせていたのが素晴らしいですよね!
庵野秀明のウルトラマンへの造形の深さは尊敬に値するなと思いました。
〉名作エピソードをツギハギではなく、繋がりを持たせたひとつのストーリーに構築しているのも素晴らしかったです。
仰る通りだと思います〜。「総集編のよう」という感想も散見されましたが私はまったくそのようなツギハギには感じず「一つのストーリー」として非常に面白かったです。
まぁ、ザラブやメフィラスが出てきた時点で彼らの思惑などは自然に脳内補完してしまうので不満を感じないという点もあるかもなのですがw
素晴らしい!ウルトラマンと庵野ユニバースの素敵な関係を語り尽くすナイスレビュー! このレビューも、観る前の私をワクワクさせる原因となってくれたレビューの一つです! ありがとうございました。