hisのレビュー・感想・評価
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優しい社会へ
作品が連続ヒット中の今泉力哉監督。
今年手掛けた2作品の内のもう一本は、監督初の同性愛。
でも見始めの印象は、イマイチだった。
何も同性愛に偏見があるからでは断じて無い。
と言うのも本作、TVドラマのその後のようで…。
基となったTVドラマは…
江ノ島を舞台に、サーフィンを通じて出会った2人の高校生、迅と渚。
これだけ聞くと、悪くなさそうな感じ。
でもこれだけだったら、2人の間に何があったのか全く分からない。どんな純愛があったのか、別れた原因は…?
本編は2人が別れてから8年後となる。
田舎町でゲイである事を隠してひっそりと暮らす迅。
そんな彼の前に、渚が突然現れる。しかも、離婚協議中の妻と親権を争う6歳の娘・空を連れて。
半ば強引な形で暫くの間住む事になるのだが…。
開幕で高校時代のシーンがあるが、本編は現在の話。
役者も違い、最初はどちらがどちらか。
状況や設定も把握出来ずのまま見始めたので、今泉作品初の空振り…と思ったのだが!
次第に引き込まれ、気付いたら感動もしていた。
今泉マジックとでも言うべきか…!?
何が良かったって、TVドラマを見てないと分からない云々ではなく、今泉監督のもう一つの真骨頂である何気ない日常描写が描かれている点。
最初は突然同居する事になった渚と空に戸惑いを隠せない迅。別れた過去もあるから尚更。
しかし、3人での暮らしが幸せになっていく。
小さな田舎町。余所からやって来た者たちにヒソヒソヒソ…。それも最初だけ。
町の人たちは皆、優しく、温かい。
この暮らしがずっと続いたら…。
でも、ゲイである事を隠して生きる者には、社会は優しくない。
渚の妻・玲奈がいきなり現れ、空を連れ戻して行ってしまう。
本格的な親権争い。
親権争いでは、男親ましてや同性愛カップルは圧倒的に不利。
玲奈と代理人はそこを徹底的に突いてくる。
負け戦になるかと思いきや、玲奈に不利になる事態が。
玲奈はキャリアウーマンで(まだ離婚してないが)シングルマザー。それ故の…とだけ言っておこう。
空はまた一旦、渚と迅と暮らす事になるのだが…。
同居し始めた当初はぎこちなさがあった迅と渚だが、再び昔のような想いで惹かれ合う。
ある時キスをするのだが…、それを空が目撃してしまう。
子供に悪気は無い。
子供は正直。
2人がキスしてた事を話してしまう。
この町の視線が気になり始める迅。その事は渚の親権争いにも…。
2人に最大の試練と苦境。
が…
そう、子供は正直。
パパは迅くんが好き。迅くんはパパが好き。
単純な事なのだ。
そんな単純な事を差別や偏見で壁を作り、社会は優しくないとしてしまう。
それは自分自身もそうだったのだ。ゲイである事を隠し、勝手に壁を作り、自分の方から社会に優しくなかった。
自分の方から壁を崩せば、きっと社会も優しく受け入れてくれる…。
宮沢氷魚と藤原季節の繊細な演技。ゲイの人たちに話を聞き、徹底した役作りで、同性愛カップルの苦悩や葛藤、一時の幸せ、それら姿をリアルに体現している。
町の居住サポートの若い女性係の松本穂香も可愛…いや、好助演。迅に密かに想いを寄せていて、ある時告白するのだが…。松本穂香ちゃんに告られて断るなんて、何て勿体無いッ!!
双方の代理人に、戸田恵子と堀部圭亮。堀部は狡猾で、戸田は頼りがいあり。
でも、大金星は次の2人。
空役の外村紗玖良ちゃんの愛くるしさ。そりゃあ親権を巡って争いたくなるわな。
玲奈役の松本若菜。妻でありながら最初はムカつく親権争い相手。が、いつしか彼女の方にも感情移入していってしまった。
と言うのも…
親権争いの渦中。
やはり同性愛者への優しくない差別、偏見。
特に、玲奈の代理人の切り刻むような言い分。
負け…と思いきや、例の玲奈が不利になる証拠が。
渚の代理人が容赦なく突く。
母親としての責任を激しく問い詰められる玲奈。涙を浮かべるその姿、見ていてこちらも苦しかった。
渚も空を愛しているが、玲奈も心から空を愛しているのだ。
同性愛者に社会は優しくないが、キャリアウーマン/シングルマザーにも社会は優しくない。
その時、渚が…。
親権争いは、意外な形に。
終わって、迅に抱き締められ号泣する渚に涙腺崩壊。
TVドラマのその後のゲイの恋愛映画だからと言って、敬遠しないで欲しい。『彼らが本気で編むときは、』や『チョコレートドーナツ』が好きな方なら絶対必見!
同性愛カップルの純愛や現実を描きつつ、
未だ根強い社会の差別、偏見、
キャリアウーマン/シングルマザーの現実までも織り込み、
自分らしく、社会に優しく生きる。
今泉監督、またまた良作! 連続ヒット記録を伸ばした。昨日見た『mellow』より良かった。
この社会の現実や彼らへの試練や苦悩はまだ続くだろう。
だが、そんな中でも、あの心温かいラストシーン。
空とパパとママと迅くんとで、ずっと楽しく暮らせたら…。
今泉監督が忙しすぎた
視点を変えれば
終始穏やかで優しい雰囲気で話が進むのだがある1組のカップルが別れて再会してよりを戻して幸せに暮らしましたというだけではなく夫と妻、親と子、父と母という関係からも話が展開されるのは良かった
周りの人達から受け入れられて2人(もしくは3人)は幸せに暮らせれば良いんだろうけどそうは上手くいかない
どれだけ2人が真剣に愛し合っていようが妻からしたら迅は不倫相手だし渚は自分を裏切った相手なのだから自分が命をかけて産んだ子供をはいどうぞと手放すわけない
LGBTを題材にしてはいるけどゲイだから、世間から差別をされたから それを乗り越えて愛する人と幸せになる、ではなく人間同士として様々な視点から2人を見せてくれたことに感謝したいです だからこそ渚のごめんなさい、だったり自分たちが一番弱いと思っていた、という言葉が観る人の心に響くのだと思うし
妻が物凄く寛大だよね 自分が妻の立場なら調停の1か月後に4人で会おうとは到底思えないので
一番残念だったのは2人がそこまで愛し合ってるように見えなかった事
愛してるというセリフもキスシーンもあるんだけど
どうしてだろう
自分が捻くれた見方をしているからだろうか
もう少し2人が一緒に生きていきたいと思い合ってることが伝わるシーンがあったら良かった
いろんな風に生きてていいんじゃないかと思わせてくれる作品
これが偏見
男性同士の激しいキスシーンに戸惑い
困惑して
笑ってしまいそうになりました。
でも、物語が進むにつれて
2人は私とは違う性的マイノリティだけど
誰かを愛する気持ちは私と同じなんだということが
ひしひしと伝わってきました。
困惑して笑ってしまいそうになることが、
自分と違うことや
マイノリティに対する
自分の中の偏見なのだなと
感じられたことだけでも
この映画を観た価値はあったと思います。
根岸季衣さんの
「この歳になったら、男も女もない。
長生きしなさいよ。」
という言葉が優しく大きく、
そんな言葉が掛けられる人に
私はなりたいと思いました。
光が幸せにしてくれる
6歳児に盲牌を教えるなんて・・・!
日本の田舎も捨てたもんじゃない。誰もが笑い、泣き、咳をして、あたたかい気持ちになって映画館を去っていくような気がした。ちなみに舞台となるのは白川町であり、同じ岐阜県でも世界遺産の白川村とはまったく関係がありません。
今ではゲイだとかレズビアンを差別的視線を浴びせるような日本人も少なくなってきましたが、本来なら都会よりも田舎の方が差別的・閉鎖的・排他的だと思ってしまいます(これも偏見にあたるならば謝ります、ごめんなさい)。ところが、住民たちは老人が多いこともあり、ゲイのカミングアウトをしても全く驚かない。優しさに包まれてるような雰囲気。子供に麻雀を教えてもへっちゃらなのです。
二人の問題はこうやって親しみやすい村人たちによって円満に解決するのですが、渚(藤原季節)の娘そらちゃんの親権を争う裁判だけはややこしい。誰もかれも優しい人間という基本があったみたいですけど、妻側の弁護士(堀部圭亮)だけは辛辣な言葉を投げてくる。まぁ、一応裁判だし、憎まれ役も必要だし・・・。そして、この裁判の驚くべき結末。やっぱり優しさなんですね。
気持ちが穏やかになりました。
映画をゆっくり観るなんて、本当に久しぶりでしたが、時間を作って観にいって良かったです。観ている間、優しい気持ちに包まれる感じがなんとも良く、癒されました。初めて、もう一度映画館でじっくり観たいなと思える作品でした。
追い歯磨き
会話劇をやらせたら今泉力哉の右に出るものはいないな、と確信。
愛がなんだに比べると、映像には現実味やドキュメンタリー性を重視したように感じられてエモさやセンスをあまり感じられなかった。現代日本における同性愛についての風潮に一石を投じるような、現実的な作りの社会派の作品はあまり好きではなかったけれど、今泉監督ならではの空気感や会話、セリフなどが調和していてかなり心に残る作品だった。この映画を好きになれたのは、同性愛を認めろ!という強烈なメッセージが込められているわけではなく、現代の同性愛の問題について柔らかく訴えていたからなのかもしれない。
歯磨き粉のくだりがめちゃくちゃ好きだった。
藤原季節の若干の素人感や、村人たちの一般人感が映画全体に良い影響をもたらしている感じが心地よかった。そして、宮沢氷魚さんの演技がとにかく自然で、人間ぽくて、あの映画の主人公にふさわしすぎるほどふさわしかった。
白川町のみんなの優しさは、小さな集落の温かさを感じられてすごく良かった。「楽園」で描かれていた集落とは180度印象が異なっていて、興味深かった。
ラストの上からのカットめちゃくちゃ素敵。迅と玲奈が会釈したところで、現代的な愛の形を感じた、、
また、素晴らしい映画が一つ!
新宿武蔵野館で観たら、今泉監督が同じ回を観ていて、握手して、パンフレットにサインしてもらっちゃいました! 愛がなんだ、アイネクライネ…、本作と才能がほとばしっている人に会えて嬉しい〜!
長身痩躯、頭ボサボサ髪と、写真どおりでした。優しそうな声だったな。
大学時代に付き合っていたゲイの主人公二人。一方は女性と結婚したが離婚調停中で、娘の親権争い前に、かっての彼が住む白川に、娘と二人でやってきて、一緒に住み始めるという話。
白川の自然あふれる景色の中での暮らしと、東京での暮らしと裁判が、見事に対比となって、まったりした流れに、小気味よいリズムを生み出している。
親権裁判の場での、双方の弁護士の辛辣な訊問が、LGBTに対する、あるいは働く母親に対する、普段の自分達が持っているかもしれない差別を、極めて冷酷に炙り出す。曰く「男性二人が子育てする普通でない環境」。曰く「子供の世話に全力と言ったり、子育てと仕事の両立と言ったり、腰の座らない言動」。それらは全て、かって俺自身がそう思っていたり、今でも潜在意識には残っているかもしれない感情。監督は、それら差別を、弁護士の言葉に載せて、辛辣に突きつけてくる。ほら、あなたもこう思っていませんか?と。
白川のこの人達のように「そういうこともあるか」と受け入れられますか?と。
そのせいか、一度は別れた主人公二人が、またカップルとなっていく様子は、ただの恋愛映画。揶揄しているのではなく、再び付き合い出す二人の様子が、"普通に" 恋愛。監督の腕なのか。
ただし、それらも凄いけれど、この映画は、子役(そらちゃん)がずるいでしょ。可愛すぎるでしょ。その圧倒的な存在感は、この映画の9割近くを占めて、他の要素を全て隅っこに追いやっちゃってます!
2020/3/10追記
本作の "優しさ" は、田舎が彼らをけっこう普通に受け入れることも大きな要素だと思うが、それは田舎の寛容さではなく、「発言力のある人の意見が全体の意見になる」という特徴が、いい方に転んだ例だとは思いました。ただ、自分はこういう点も含めて、今泉監督の "底の方に潜んでいる優しさ" を、好きです。
gdgd【超絶ネタバレです】
本当はタイトルを【終わる終わる詐欺】にしたかったのですが、それだとタイトルだけで思い切りネタバレになるので自粛しました。最初のクライマックスシーンで終わっていたら星4つにしたと思うのですが、そこでは終わらず、さらにクライマックスらしきシーンが3度もあってかなり食傷気味となり、いよいよ5回目の正直(分かりやすい引きのカット)でやっと終わってくれました。長かった。。。
途中までは良かったんだけどなあ。心象風景や心の声は無く、全てセリフのみの進行でもちゃんと登場人物に感情移入できた。(ノンケなので、リアルなゲイの心情の動きまでは分からないけど)でもラスト30分、全ての曖昧だった部分をきっちり説明し、型通りのカミングアウトをし、さらに登場人物誰も悪くないという美しい展開となり、そしてLGBT映画として「政治的に極めて正しい」結末。。。
役者はみんな良かった。特に妻役の松本若菜は「通訳なのに英語下手」という点を除けば大変うまかったので、返す返すもラスト30分が余計だったなあ。。。
素晴らしかった。
始まりは、もしかして2人のラブラブな生活をずっと
見るのか?と思ってたら、
そこから2人だけの話じゃなく、
2人が生きる世界とその向こう側まで描いてて
素晴らしいなと思いました。
宮沢氷魚さんの空気感はちょっと異常。
日本人であんな俳優他にいるかな?と思える佇まいだった。
妖艶とはまた違うけど、透明感と言うか、
そこにいるけどいないような不思議な感覚。
素晴らしい俳優さんだなと思いました。
対する渚役の方は最初なんか危ういなと思ったけど、
終わる頃には大好きになって、
あいつ今何してるのかな?って自分の中で育って行く。
今泉監督のマジックだと僕は勝手に思っている。
周りからの偏見はもしかしたら自分が周りに対して偏見を
持ってたからかも、と言うお葬式のシーンは泣けた。
迅の勇気と周りの優しさに泣けた。
子どももとても良かった。
彼女のおかげでドラマは動き出すし、
渚と迅が変わって行くのを感じられた。
2人だけの世界はどんどん広がって行った。
同性愛をテーマに裁判をやる事でここまで世界を広げた
今泉監督の手腕に感服してしまった。
とても優しい幸せな時間を過ごせました。
文句なし
2020年、万人にお勧めしたい作品!!!
《愛がなんだ》の今泉監督が、とても優しい作品を作ったってよ!!
と、布教活動したい。
先ずはキャスティング最高!
(俺の)宮沢氷魚のゲイ役は、最近増殖傾向のゲイの雰囲気が出ていてびっくり。
おいおい、あんな真っ白な肌と異常に長い足、指先、ぷっくりした唇、どれをとっても《らしい》。
肉欲プンプンのゲイではなく、壮美なゲイという感じ。
お相手の藤原季節さん、演技力いまいちなんだけど、
この二人の雰囲気はとてもいい。
そして子役ソラちゃんのよく通る声に癒される。
しっかりした意志を持ち、気持ちをど直球に伝える役は素晴らしかった。
そして、たった一言で観客を射抜く根岸季衣さん、
迅の良き理解者で、いちいち言葉が重い鈴木慶一さん、
どんどん畳みかけるように言葉の圧力で追い込んでいくアンバマンw
いやあ、すごかった!!!
情景も、人の優しさも、まっすぐ胸のど真ん中に入ってくる。
こんな田舎なら、私も住みたいよ!!
私の今後の脚本にも大きく影響しそうな作品でした。
また観に行こう!
こういうのが、《残すべき作品》だと思った。
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