「生きる希望を感じた…」his LUCKYさんの映画レビュー(感想・評価)
生きる希望を感じた…
ドラマ版hisを何度も観返し、江ノ島へ聖地巡礼をし、その足で映画を観ました。ドラマ版から13年後の2人と周りの人々の物語。
バイアスが相当かかっているのはご容赦ください。というのも俺は男性同性愛当事者。今のパートナーと出会ってちょうど13年、それも映画の舞台である白川町のすぐ近隣で、男2人&愛犬と共に生きています。
このような、ほんわか余韻を残すドラマと映画に出逢えたことを幸せに思います。子供の頃に周りからからかわれたり、親から否定されたり、自己の存在に悩み、消えてしまいたい死んでしまいたいと悩んだ同性愛者は俺だけではないでしょう。そんな苦さを思い出しながらも、この映画の素晴らしい所は誰も悪者ではない所。同性愛をテーマにしながらも、ゲイと結婚してしまった女性に対しても慈しみの目線を向けられた事、脇役と呼ばれる方々の秀逸な存在感。
映画の舞台近隣に住む者としては、現実はこうは行かないよなぁと思う部分はありますが(笑)見馴れたはずの風景を愛しいと感じられました。
同性愛を気持ち悪いと感じることも真実だと思います。生理的にどうしても無理という方々の存在も俺は認めています。同性愛者の俺からしても、決して美しいといえないガチムチカップルを見ると興醒めしてしまう感情があるのは事実です。でも、みんな幸せであって欲しい。どんな人でも認め合おうよ。そう優しく思わせてくれた映画です。
LGBTの中にも様々なタイプがいて、世の中に積極的に自分たちを認めて欲しいと主張する方々もいますが、俺のように社会の中でひっそりと誰の迷惑にもならずに生きていきたいと願う同性愛者もいます。この映画はただ単に同性愛を認めて欲しいという一方的なメッセージでは無く、世の中にはそれぞれがそれぞれの事情を抱えている人々がいて、みんなが尊重されるべき、その中に同性愛で苦しんでいる人もいるんだよ。という柔らかなメッセージが含まれているように感じました。
圧倒的な映像美だとか、驚きの展開などはないかも知れませんが、じんわり心に沁みる素敵な映画。周りの人にも、そして自分自身にも優しくなろう。そういう想いを胸に抱きつつ劇場を後にした瞬間、温かな空が目の前に広がっていました…
2回目も観に行きました。主題歌のマリアロードもとても良く、涙しました。ドラマ版の渚からすると、映画版の渚は感情や言葉が多い気がしてキャラ変?とも感じましたが、藤原季節さんの憎めない演技に引き込まれました。宮沢氷魚さんは迅のイメージにぴったり。その他登場人物みんな好きです。
美しく儚い素敵な映画をありがとうございました。同性愛者も生きていて良いんだ。「長生きせぃ」根岸季衣さんの台詞が胸に突き刺さりました。