「「歳を取ったら、男も女も関係ない」by吉村房子(根岸季衣)と吉村美里(松本穂香)のおばあちゃん!?」his masaki_taさんの映画レビュー(感想・評価)
「歳を取ったら、男も女も関係ない」by吉村房子(根岸季衣)と吉村美里(松本穂香)のおばあちゃん!?
完成披露試写会にて鑑賞。
立見が出るほど、映画と出演者への関心度の高さを感じる。
前作ドラマから映画の公開を心待ちにし、
予告、記事、インタビューなどあらゆる前情報を入れてから迎えた完成披露試写。
情報を入れ過ぎたかも…、という余計な心配は、
センセーショナルな「えっ!?」シーンから吹っ飛び
最後まで世界に引き込まれ、胸が詰まるシーンの連続に涙が何度も頬を伝う。
ドラマからの伏線と言えるかもしれない、本、好きな人の香り、
映画での、卵、絵本、手紙、自転車の使われ方にもぐっとくる。
主演の2人が試写を観終わったあと、その手ごたえに握手をした…というラストシーンで涙を流し切った。
♪神様 どうか お願いだから♪ 主題歌マリアロード(Sano ibuki) エンドロールを聴きながら
彼らが選んだ道の行き先が、優しい世界とつながっていてほしい。
それぞれがただ、幸せになってほしいと願いながらも
沢山考えさせられ、勝手に彼らのこの先を心配してしまった。
LGBTQというテーマ、それだけではなかった。
人間愛、子育ての在り方、そこに繋がる母娘関係、
地域移住とコミュニティ
離婚裁判の無常、無力感まで考えさせられた。
誰も悪くない、
ただそれぞれが、もがき苦しみながらも、
人を愛し、一生懸命生きているだけ。
だけど、人とも社会とも噛み合わない現実が辛く厳しい。
受け入れる、皆で育てる、地域や性別世代を超えた色々な人が関わることが出来る、転んだらみんなで助ける。
そんな子育ての新しい可能性を見せてくれたようにも思う。
出演キャスト皆さんの魅力と見逃さないで欲しいシーン。
井川迅:宮沢氷魚くんの言葉少ない表情演技が尊い。
田舎暮らしをしていても消せない美しさが、白川町の優しい自然の中に儚く、溶けてしまいそう。
渚が現れた戸惑い、静かだった世界が乱される焦燥感。
空ちゃんや緒方さんとの関わりで、閉ざされていた心の扉が開いていく、狩猟シーンの表情が見もの。
役者として初体験だったという濃厚なキスシーンから朝日に立つブリーフ姿が、脳裏に焼き付いてしまった。歯磨き粉味verも重要。
日比野渚:藤原季節くんのダメンズをはるかに超えた、くずなんだけど人間味溢れる愛されキャラの魅力は、彼自身の魅力、彼も主役なんだと思わされる強烈な演技力。
舞台挨拶で語った、2020年の抱負は「我慢」、劇中の渚にも通づる言葉。
胸えぐられた法廷シーンは、渚の決断によって一気に許された。
日比野空:紗玖良ちゃんの純粋に父母を想い、更には迅をも気づかい、主要キャストをつき動かす言葉の影響力‼︎7歳のお芝居全てが天使!!
日比野玲奈:松本若菜さんの、母として、妻として、女として、彼女の苦悩、親子関係は身につまされ深く深く共感。シングルマザーにはサポートと心のケアが不可欠。
迅との秘密の共有、転んだらみんなで助ける、それがこの作品の最も重要なシーンだったのかもしれない。
吉村美里:松本穂香さん、「わたしは光をにぎっている」では銭湯でお湯沸かしてる鈍臭かった娘が、移住推進課としてシャキシャキ人の為に働いて、氷魚くんに告白までして、勝手に感動。移住推進課の存在を初めて知る。
美里さんが語る、「年寄りがおしゃべりな理由」もイイ。
緒方さん:鈴木慶一さんの存在が、優しい社会のお手本。
「誰かに出会って影響を受けるのは人生の醍醐味やで」
「誰が誰を好きになろうとその人の勝手やで。好きに生きたらええ」
吉村房子:根岸季衣さんの「歳を取ったら、男も女も関係ない」
観ているこちらが一番救われた。
キャスト名を見直してみて、実は吉村美里ちゃんのおばあちゃんだったのか!?
水野弁護士:堀部圭亮さんと桜井弁護士:戸田恵子さんの法廷シーンはきつかった。
「一旦、裁判という場に巻き込まれた人間は自分の未来がどうなるかを如何ともしがたい」というカフカの「審判」の意味を考えさせられながらも、
ベテラン俳優陣の存在感とセリフの重みが胸にしっかり刻まれ、様々な場面で救われた。
二日連続、今泉監督作品を試写で観れた幸運。
ありのままの自分の正直な気持ちを伝えることの大切さを再確認。
mellowを観た直後だから、今泉節は薄い!?と感じたのは理由があったことを、舞台挨拶で話されていた。
「脚本家のアサダさんとも沢山やり取りをして、見る人によっては、気にする人にはこれでも気になるんじゃないかと、気になる部分を直して相談しながらやりました。」
それでもやはり、見逃している今泉ワールドの細かな演出を、探しに行かねば!
聞き逃した音、まだまだあるはずのドラマからの伏線。緒方さんの飼い犬五右衛門の演技。
何回観るかな?
観る前以上に、また観たい、追い続けてきて良かったと思える作品に出会えて良かった。
年末紅白の舞台でも、MISIAがLGBTサポートの意味をもつレインボーフラッグが掲げられ、氷川きよしが「ありのままの姿で」龍に乗った。時代が来たな~と思う2020年。
当初3館だけだった上映館が、全国ロードショーへ広がったことも優しい世界への大きな一歩と信じて。
この作品に関わる皆さん、応援しているファンの拡散力にも感謝したい。