「世紀末は陽炎」マーティン・エデン kthykさんの映画レビュー(感想・評価)
世紀末は陽炎
20世紀初頭という時代のカタストロフを生きる名も無い、若きひとりの作家の物語。
原作の舞台はアメリカ西海岸だが、イタリアのナポリに移され、音楽と映像で生み出される映画の世界は一層、興味深く、ドラマチックだ。
テーマはラス・ブリッセンデンが書いた「陽炎」にある。優雅なブルジョワジーの19世紀と貧困と過酷な労働で荒廃した20世紀の貧民生活。その狭間の中でマーティン・エデンの「詩」は何を語ろうとするのか。
それは決してイディオロギーではなく、新たな人間が生に生きるヴィジョンなのだ。ロースやシェーンベルクが懸命に模索した「世界」がマーティンを育てる老作家ラス・ブリッセンデンの「陽炎」として表現される。
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