「縮めることの出来ない距離から傷つけ合う二人を対等に見つめる21世紀の『クレイマー、クレイマー』」マリッジ・ストーリー よねさんの映画レビュー(感想・評価)
縮めることの出来ない距離から傷つけ合う二人を対等に見つめる21世紀の『クレイマー、クレイマー』
ニューヨークで劇団を率いるチャーリーと主演女優のニコール。二人の間には愛息ヘンリーが生まれ、舞台も成功しブロードウェイ進出も手中に収めるが、ニコールは劇団を脱退して故郷であるロサンゼルスに戻ることを決意する。二人はあくまで冷静に事態を収束させようとするが些細な助言をきっかけに泥沼の争いが始まってしまう。
どうしても40年前の名作『クレイマー、クレイマー』を思い浮かべてしまいますが、こちらはヘンリーを中心に向き合い折り合いをつけようとするニコールとチャーリー双方の葛藤に寄り添うコメディ。カウンセラーの前でニコールがブチまける暴言から始まる細かいギャグの応酬にいちいち笑わされますが、些細なことからヒビが入った男女の関係が決して修復出来ないほどに壊れてしまう過程は非常にリアル、お互いを認め合いお互いの心情を語っていた二人が次第に声を荒げて埋められない距離から罵り合うまでの一部始終を物凄いテンションで観せるアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンの演技が圧巻です。個人的にはチャーリーが胸に溢れる様々な感情を振り絞るようにしてピアノをバックに歌うシーンが印象的でした。双方の弁護士を演じるローラ・ダーンとレイ・リオッタの怪演が単調になりがちな展開にくっきりと抑揚をつけているのも楽しかったです。
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