「ロイ・アンダーソン美術館へようこそ」ホモ・サピエンスの涙 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
ロイ・アンダーソン美術館へようこそ
30余りの、“動くタブロー”。
“展覧会”を観た、という感覚だ。
ロイ・アンダーソンは、“ナラティブな(物語性のある)絵”を映像で描きたかったのに違いない。
シーンはE.ホッパー的であり、彩度の低いグレーな世界はユトリロのようだ。戦争のシーンはO.ディックスの影響か。
そう考えれば、テーマが雑多であることが説明できる。
日常のスケッチから、銃殺刑のシーンまで。苦悩する牧師から、廃墟と化したケルンの街の空を飛ぶ男女まで。何のつながりもない。
公式サイトの「全人類に贈る-愛と希望を込めた万華鏡」とは、誇大な宣伝だ。
ハッと目の醒めるような画は、画面の隅々までピントが合っている(被写界深度が深い)ことによるものだろう。
そして何より驚いたのは、物体の「影」が極小であるということ。
どうやって実現したのだろうと思ったら、CGではなく、巨大なスタジオで作り上げた映像らしい。小さい照明が沢山あるに違いない。
その他、「All of Me」(@シャンパンを飲む男女のシーン)は、良かったな。
自分が一番好きなのは、ラストシーン。最後に来て、荒れ地で立ち往生する男の話とは(笑)。
なるほど、「人間の脆(もろ)さ」を描いた映画の仕上げにふさわしく、「年齢や時代を超え」た「永遠(Endlessness)」がここにある。
とはいえ、朝イチの鑑賞でなければ、確実に居眠りしただろう。そういう映画であった。
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