劇場公開日 2020年11月20日

  • 予告編を見る

「【オマージュ】」ホモ・サピエンスの涙 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【オマージュ】

2020年11月22日
iPhoneアプリから投稿

スウェーデン語の原題タイトルの意味は、「はてしない物語」。

神はいずこと絶望する牧師。
十字架を背負わされて歩く夢。
宗教は、人を縛り、救済などせず、逆に暴力に駆り立てているように見える。

戦果で荒廃した街。
シャガールの絵のように、それを上から眺める恋人同士。
人は茫然自失するだけなのだろうか。

北欧の青空や太陽が降り注ぐことの少なさを象徴するような曇天。

やるせない気持ちになる場面も続くが、愛に導かれるシーンや、歌い踊るシーンで、それでも人々は生きて行くのだと、メッセージを発しているように感じる。

宗教は少しずつ形を変え、人々に寄り添おうとしてるではないか。

荒廃した街は放置されずに、建物は新たに建て直されたではないか。

振り返ってみたら、確かに、人々はこうして生きてきたのだとあらためて思う。

エンディング。
エンストした車に四苦八苦する太ったおじさん。
まあ、僕達もそんな感じだろう。
でも、ずっとそこに止まっているわけではない。
きっと誰かが助けてくれたり、解決策はあって、また、前に進めるのだ。
物語は続くのだ。

抑揚が抑えられた場面展開で、退屈に思う人もいるとは思う。
ただ、この作品は、我慢強く、黙々と物語を紡いできた人々へのオマージュで、それを表現するための仕掛けではないのかと思う。


ワンコ