「日本の表現規制の根本をあぶり出している」春画と日本人 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の表現規制の根本をあぶり出している
イギリスの大英博物館で春画展が開催された。その巡回展を日本でもやろうという動きがでたが、日本の国公立の博物館・美術館はどこも開催に応じてくれなかった。日本の伝統芸術である春画の展覧会が、イギリスではできても日本でできないとはどういうことか。異様に矛盾したこの状況から本作は、春画が近代にどのように扱われてきたかをさらけ出し、妙な忖度から生じる日本の表現規制の根本的問題をあぶり出している。
なぜ春画がわいせつとされたのか、美術という概念が明治時代に新しく生まれたのと、どのように関係しているのかなどが非常によくわかり、今日の日本の性的表現に関する表現規制の源流を見つけることができる。日本の絵画史を学ぶ上で貴重な知見がたくさん詰まった映画だ。
春画展は結果的に私立の博物館、永青文庫で開催されてが21万人を動員して大成功だったそうだ。映画の中でも有名な春画作品を無修正でたくさん観ることができるし、そういう意味でも見てよかったと思える作品だった。
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