「松山千春の「恋」とRadioheadの「creep」。どちらの挿入歌もこのうえなくフィットする奇跡的な映画。」彼女は夢で踊る kizkizさんの映画レビュー(感想・評価)
松山千春の「恋」とRadioheadの「creep」。どちらの挿入歌もこのうえなくフィットする奇跡的な映画。
2019年に閉店予定だった広島のストリップ劇場を舞台にした映画。(現在は営業継続中)
夢を見る場所、エンターテイメントの場所が危機的状態の今、突き刺さる映画でした。
まず男女のお話としても出来が良い。
それに加え”広島第一劇場”という”場”の力がすごい。
サラに恋すると同時に広島第一劇場にも恋をする。
古くなり静寂を感じる場所が持つ静かなエネルギーに胸を掴まれる。
鑑賞者の気持ちは現実の劇場にもリンクしていく。
確かに存在した場所での歴史/記憶/青春/人生を想うのは『わたしは光をにぎっている』でも感じた素敵な感情。
色んな場所を思い浮かべた。
十三の七藝で見れてよかった。
帰りは自然とファンダンゴ跡地に足が向いた
この手のストーリーで必須になる”ヒロインがかわいい”って点は大合格。演技も空気も素敵。
映画を見ている間は本気で好きになってしまう感覚。
こうなると説得力がグン上がりするんよなぁ。最近だと『東京の恋人』もそんな作品だった。
ヤクザとかドロドロっとした部分はほぼ描かれてないのがよかったなぁ。
過剰に見せるための暴力がない。トラブルもコメディタッチに。
あと特筆すべき点として音楽がよい。
エレクトロニカ/音響系の音でつねに淡く脆く、そして静かなエモーショナルが漂っている。見事。
映像もストリップ劇場が舞台でも過度にいやらしかったり暗かったりせず、優しくて儚い明るさが印象に残ってる。
とにかく全体の空気がよかったなぁ。
挿入歌も素晴らしい。「恋」と「Creep」。まず交わることがないと思っていた2曲がどちらも違和感ゼロでハマってる。
昔の栄華を思わせる松山千春の『恋』。”昔”を感じさせるからこそのエネルギー。流れるシーンと相まって鳥肌が立った。
「Creep」がストリップダンスにマッチする意外性。最初に流れるシーンで自然と涙が出た。
サマソニ03で二度と聴けないかもと思っていた曲が聴けた奇跡。
と同時にアレほどの盛り上がりはもう二度とやってこないのではと過去の栄華を思い出す感覚も。
どこか話とリンクする。
2020年のいま、自分は大好きなライブハウス達に重ねて見てました。
夢があって、出演する側も見る側も情熱がエネルギーとなってその場に永久に残っている。
ライブハウスが好きな人。
2020年にそう強く思った人にぜひ見てほしい映画。
良い映画に出会った!