「傑作」トップガン マーヴェリック Primula Modestaさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作
賞レースとかには絡まないいわゆる「娯楽大作」なので、後世まで高く評価されるかどうかはわかりません。しかしこれほど強烈なメッセージを放つ「娯楽大作」がかつてあったでしょうか。そのメッセージは、この作品を象徴する二つのセリフを借りて表すと「明日以降のことをうじうじ考えて止まるな!今日を全力で生きろ!」ですかね。しかし無印トップガンに比べて、なぜこの作品のメッセージは強く響くのか。1986年当時のトム・クルーズはまだキャリアも浅い一人の若手だったし作品自体が完全に「作り話」だったわけですが、今作はあれから35年間の自身の人生のすべてを、それこそボン・ジョヴィの「イッツ・マイ・ライフ」みたいに「これが俺の生き様だ!」と叩き付けてきた。ヴァル・キルマーとの変わらぬ友情も、亡き戦友(ここではトニー・スコットを指す)への想いも、全て彼のリアルだから、作り物のチープさがない。作品全体からそういう一貫したテーマが感じられるから、ご都合主義の脚本ですら必然性があって、意図的にそうしたんじゃないかと思える。だって観客、特に若者に「生きろ」って伝えたい作品で若者が一人でも死んだら台無しでしょ?マーヴェリックは名誉の戦死でも話は綺麗にまとまったと思うけど、あえて生還させたのはトム自身が「俺の闘い、俺の人生はまだまだ終わりじゃない」と堂々宣言したかったのではないかと考えるのは、感傷的にすぎるかな?とにかく自分にとってもトム=マーヴェリックは混迷を深める2022年の生き方を示してくれる「教官」でした。まあ前述したテーマを戦争行為で表現するのはどうなのかとか、アイスマンとの友情に比べてペニーとの愛はとってつけた感があるとか、なんで主題歌がマイティウイングじゃなくてレディーガガなのかとか、ケチをつけようと思えばつけられるけど、この映画の価値はそんな些末な話とは別の次元にある。“今”映画館でこの映画を見たことには、単に「名作を見た」以上の意味があると思った人は決して少なくないはずです。トム・クルーズ、感動をありがとう。