「昔、わたしもトム・クルーズでした」トップガン マーヴェリック マツドンさんの映画レビュー(感想・評価)
昔、わたしもトム・クルーズでした
不覚にも、のめり込みました。アドレナリン、ドバーッ、 ドーパミン、プシュッ、 ストレス、スカッって感じ。
映画を見終わって外に出た自分が、トム・クルーズになっている錯覚に浸っていた、20代の感覚を思い出しました。
でも、別の観点から考えてみると。
〔戦争論〕
吹き替えでは、『ならず者国家』の一言。イラク、イラン、北朝鮮のことです。ブッシュ・ジュニアが好んで使ってました。
そのおかげで、イラクは破壊されつくし、誤爆で無辜の市民がたくさん亡くなり、歴史はISを生み出し、ヨーロッパでの多発テロへとつながりました。
そうした大局を視野に入れることなく、愛と友情と上昇志向や責任感、それだけでスイッチ一つ押せば人を殺せてしまう。自分たちと同じように、家族があり、愛する人がいて、かけがえのない命を生きていることに、心を痛めることすらなく。
戦争・軍・愛国心、ほんとによくできたシステムです。この映画、それをよく凝縮して見せてくれました。
〔高齢化〕
トム・クルーズ、御年60。普通なら、2023年3月31日をもって定年です。
その彼が、トップガンのトップの若者たちを凌駕して、第一線で活躍してしまう。というか、そんな映画の主人公になってしまう。
いかんでしょう。
1986年版では彼も24歳前後。そんな、ピッカピッカの若者が活躍べきなんです、今だって。限られた資源を奪い合わないために、生物には死が訪れる、と生物学は教えてくれています。
筋肉モリモリ、どこかイタズラ坊主っぽい笑顔、トム・クルーズには困ったもんです。
という訳で、世界中にアメリカの正義を拡散してくれたこの映画、楽しみつつも、複眼視しなきゃ。おせっかいな注意書きです。