「だが今日じゃない。」トップガン マーヴェリック U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
だが今日じゃない。
凄かった。
あまりの事に暫く席を立てなかった。
131分らしいけど、あっという間だった。
冒頭、前作の主題歌が流れる。小憎らしい演出にニヤリともするのだけれど、なんというかアドレナリンが誘発される。
脚本というか、構成が秀逸で、中でも台詞が心地よい。
あの作戦のプランを作ったのはマーベリックなのであろう。トップガンの精鋭達でも実現できそうにないプランだった。
指揮官は言う「お前は希望ではなく絶望を与え続けている」マーベリックが立てたプランは、それほどに難易度が高く最早机上の空論だと断言されてるようだ。
それを実現させるマーベリック。
2分15秒のタイムアタック。
急上昇の負荷ゆえにブラックアウトしそうな意識と視界の中シュミレーションを完遂する。
不可能ではない事が証明される。
ここに至る展開がもう…見事だった。見惚れてた。
圧倒的なスピード感。
それは絵だけではなく、物語もそうだった。
山場がいくつあったのだろうかと思う程、ボリューミーな前半戦。
ドラマの種をしっかり植えつつも、スローになりはしない。音速の機体と疾走するバイクと生を謳歌する魂のなせるワザなのか。
いよいよミッション開始。勿論、成功する。
その成功にもしっかりと綱渡りを盛り込んで、俄然結末が過る隙が与えられない。
そしてドッグファイト。
目玉といえは目玉だけれど、無茶苦茶な絵の目白押しなのだけれど、弾幕を背にかっ飛ぶ戦闘機のカッコよさったらない。
だが、それすら前振り。
撃墜されるマーベリック。
「!!!」
まさかの悲劇で終わる予感…。
だが、ここからがトップガンにマーベリックが付随した意味だった。
帰還はするのだろう。
でも、どうやって?
まさか、ここに至って徒歩なんて事はあるまい。
…流石です。
終盤になって駆り出されるF14トムキャット。
可変翼のあの機体。前作の主役機の登場だ。
「おおおおおおお…」
ミリタリーに疎い俺でも知ってる機体。
更なるドッグファイトの開戦だった。
旧機体を自在に操るマーベリック。
機体マニュアルにはおおよそ無い事だらけだろう。複座に座るルースターにはあり得ない事ばかりだったろうと思う。
だがいよいよ追い詰められる。
死を覚悟するマーベリック。
ロックオンの警報。放たれるミサイル…直後の爆炎。
煙の中から出てくる味方機。
歪みあっていたハングマンだった。
王道でありながら、これぞトップガンと拳を掲げそうだった。
父の死が絡む深い深い確執は、死線を共にする事で溶けていく。
いやあ…凄かったあー
こんな映画を見せてくれたトムクルーズと同世代に生きてる幸運に感謝した。大袈裟だけど。
操縦席の絵が単調といえは単調だけれど、あんな視界を共有できる事なんてまず無い。
現役のパイロットの感想をちょっと聞いてみたいと思った。そんな知り合いいないのだけれど。
自分も年齢を重ね、世代交代を意識もしてるけど、いやいやどうして「俺は教官なんかじゃない。戦闘機乗りなんだ。」なんて言うトムクルーズに自分を重ねる。
そして、自分がやってきた事を人に託す事なんて出来ないなんて事を言う。
…沁みるわぁ。
後進の育成だけが、老兵に残された道ではない。
その背中を見せ続ける事だって、重要な使命だ。
人生の教訓を教えられたような気がした。