「伝説的映画にふさわしい伝説的な続編」トップガン マーヴェリック 葉読五式さんの映画レビュー(感想・評価)
伝説的映画にふさわしい伝説的な続編
前作である初代トップガンは1986年に公開された映画で、制作国アメリカはもちろん日本でも大ヒットをおこした伝説的映画だ。今に比べて自衛隊に対する理解も乏しい時代に、アメリカ海軍のパイロット養成学校を舞台とした映画が流行するというのはとんでもないことであり、それは前作のクオリティの高さを示している。
その続編となる本作は当然ながら高いレベルが求められる。ただ面白い程度では全く不十分だ。制作側にかかるプレッシャーは相当であっただろう。
そして、そのプレッシャーに打ち勝つように、本作は前作を超える大傑作娯楽映画となった。
しかし、それも当然のことではあった。本作の制作チームはトム・クルーズを中心に、一切の妥協を許さない制作体制で作られた。役者は皆米海軍協力の下本物の戦闘機に乗り込み、8G近くの負荷を受けながら演技をした。戦闘機の飛行シーンもほぼ実写。CGではたどり着けない大迫力の空中戦がスクリーンに展開されていた。深い考証のもとに航空機的リアリティを持ちながら、エンタメ的面白さを出すためのフィクションを非常に良いバランスで混ぜ込んでいる。ドルビーアトモスなどの特殊設備が導入されているスクリーンで視聴すればその迫力に感動すること間違いなしの出来だ。
ストーリーも王道でありながら隙がないクオリティだ。前作との繋がりは濃すぎず薄すぎず、破天荒なエース・パイロット、若かりしマーヴェリックが抱え続けた因縁と戦い、かつての友と交友し、新たなるエース・パイロットを育て上げる。30年という時をリアルにかけたからこそできる、ピート・マーヴェリック・ミッチェルの物語が展開されていた。
強いて言うなら、序盤でされた無人機と有人機の話が回収されなかったのが気になるところではある。死のリスクが高いミッションという点でも、人間の体では耐えられない高G旋回がネックという点でも、それらは無人機によって解決される問題であるので、なにか有人であるからこそできる要素が欲しかったところではある。とはいえ、それは些細な問題にすぎない。
自分は当時劇場で前作映画を見ていない、というよりそもそも生まれていない。前作を見たのはせいぜい1年前だが、30年の時を経て生まれた本作だけができる表現に感動させられた。当時劇場で見た人はさらなる感動を得られるはずだ。