「トム&トップガン フォーエバー・フライト」トップガン マーヴェリック 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
トム&トップガン フォーエバー・フライト
映画には忘れ難い瞬間がある。
36年前、夕陽の空母から戦闘機が飛び立つ。最高にマッチした音楽と共に。
それに乗り、スターダムという大空を我が物にした。
言うまでもない。『トップガン』とトム・クルーズ。
私はリアルタイムで見た訳ではないが、『トップガン』のこの開幕シーンを見るといつもそう思う。伝説とスターが誕生した瞬間。
その興奮と躍動は永遠ーーー。
それを思わせてくれる瞬間が、再び。遂に。
前作公開後からあった続編の話。
が、『トップガン』に特別な思い入れがあるトムは安易な続編を作りたくないと拒否。
やっと満足いく続編の話がまとめられ、本格始動したのが10数年前。
ところが、トニー・スコットの死(まさかの自殺…)。前作はトムの出世作であると同時に、トニー・スコットの出世作でもあった。あのMTV感覚のカッコいい演出、映像、編集、音楽は全てトニー・スコットのセンスと言っていい。彼ナシの続編などあり得るのか…?
ミッション(企画)は続行。新たな監督は『オブリビオン』のジョセフ・コシンスキー、脚本に『ミッション:インポッシブル』第5作第6作の(監督兼)クリストファー・マッカリー。近年のトム映画を支えた強力布陣。
当初は2019年夏公開予定だったが、作品のクオリティーを高める為一年延期。そこから不運が続いた。
コロナで何度延期になっただろう。コロナ延期で最も公開が長引いた作品かもしれない。
何度予告編も見ただろう。
トムの熱意とこだわり。劇場大スクリーンで!
本当に待望の作品。遂に、やっと見た!
前作と同じくパラマウント・ロゴ。そこに掛かるハロルド・フォルターメイヤーの音楽。
続く“ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー・フィルム”にジ~ン…。今は亡きドン・シンプソンへの敬意。『トップガン』はこの名タッグ二人のプロデュース作でもあるのだ。
OPクレジット~メインタイトル~開幕シーンも前作と全く同じ。長い歳月を経て作られた続編の始まりが前作と同じって、その心憎い演出がやっぱり嬉しい。
今まさに夕陽の空母からテイク・オフしようとする戦闘機。
あの名曲。キターーーッ!! 『デンジャー・ゾーン』!
もう開幕から興奮爆上がり! 36年前もこうだったであろう。
我々の心は始まって僅か数分で映画の中に飛び出して行った。
『トップガン』の続編が作られると聞いた時、自然とこんな話にして欲しいと思った。
前作ではエリート・パイロット候補生だったピート・ミッチェル。通称“マーヴェリック”。
そんな彼が今度は教官となり、新人パイロットを鍛える。
ベタな設定かもしれないが、それが一番いい。
実際、大まかな設定はそうなった。
やはり『トップガン』には直球王道が合う。
そしてそこに、これまた直球王道だが熱いドラマ展開を加えて。
大佐となったマーヴェリック。が、これ以上の昇進を拒み、現状に留まり続ける。
何故なら、自分は現場主義。一介のパイロット。
軍で“伝説”とされ、輝かしい戦歴を誇るが、等しいくらいの“問題児”。今もまた命令を無視して音速飛行テストに挑戦。
扱い難く、懲戒にもしたい所だが…、彼にしか出来ない“ミッション”が課せられる。
険しい山や谷に囲まれたならず者国家の核プラント基地破壊。
そのミッションに出撃…否。“教える”。
“トップガン”で若きエリート・パイロットたちにこのミッションをクリア出来る訓練を施す。
自分が教官って柄じゃないのはマーヴェリック自身が知っている。昔も教官職に就いたが、すぐ辞めた。
が、これはある人物からのたっての特命。
それを知り、マーヴェリックは教官として、再び“トップガン”に帰還する…。
若きエリート・パイロットは昔も今も同じ。
自身に満ち溢れ、血気盛んで、怖いもの知らず。自分も昔はああだった。
ミッションや訓練以上に、彼らとの関係も難ミッションになりそうな…。
若きパイロットたちの中に、マーヴェリックが教官を渋った理由が。
“ルースター”ことブラッドリー・ブラッドショウ。マーヴェリックの相棒にして親友、今は亡き“グース”の息子。
彼を見るとグースを思い出す。どうしてもグースの死も思い出す。悲劇的な事故ではあったが、親友の死は未だマーヴェリックの心に癒えぬ重傷…。
マーヴェリックに強い反発心を抱くルースター。父の死の責任を咎める。
それともう一つ。一度、入隊の願書を破棄された事。
だがこれには、グースの妻との約束が…。
マーヴェリックとルースターの確執と和解。
直球王道ながら熱いドラマの要素は揃った。
チームがまとまらない。まとまらなければミッション成功は無い。
訓練でも失格者続出。ここで成功しなければ、実戦で死を意味する。
チーム内の対立、亀裂。
彼らには不可能なのか…?
どう彼らを導けばいいのか…?
悩むマーヴェリックが助言を求めた相手は、今唯一の理解者であり親友。
感涙の瞬間。“アイスマン”ことヴァル・キルマー登場。
今回トム以外で同キャストによる続投はキルマーのみ。トム同様36年ぶりのカムバックは歓喜ものだが、特別な理由が。
喉頭がんを患い、闘病生活中のキルマー。自分で声を出せず、発生装置を使ってやっと会話が成り立つ。
そんな苦しい身ながらも、キルマーの出演を望んだトム。キルマー自身も熱望。
それだけに、この出演と再会は、奇跡だ。
かつて反発し合っていたライバル二人が、今は深い友情で結ばれている。
事情も含め、熱いものがこみ上げてくる。
アイスマンとの再会によって心が解放されたマーヴェリック。
チームとの関係も良好に。彼ら自身もまとまり始める。
そんな時、訓練中に事故が。死者は出なかったが、一機失う。
いかにこのミッションが危険なものか。改めてそれを目の当たりにし、再びチーム内に暗雲立ち込める。
さらにその責任を負わされ、マーヴェリックは教官を降ろされる。
彼らはまだミッションをクリア出来る腕に達していないというのに…。
“不可能”の烙印を押される。
…ならば、“可能”である事を見せる。
“考えるな、感じろ”
マーヴェリックは無断で機に乗り、実戦と同じデモを成功させてみせた。
これに刺激を受けたチームの面々。俺たちにだって出来る! 再び彼らの心にエンジンが掛かる。
またまた問題行動を起こしたマーヴェリック。復職させるか、それとも…。軍の決断は…?
若いパイロットたちの挫折や再起、成長の物語だが、マーヴェリックにとってもそう。
かつてと同じ、挫折、再起、成長の物語である。
この歳になってもそれを繰り返すとは…。
いや、それが人生なのかもしれない。失敗や再起の繰り返し。そこから成長や成功を見出だす。
人生は、永遠の青春なのだ。
マーヴェリックは復帰。
いよいよミッション決行日。本隊と予備二班に分かれ、ルースターは本隊に。
隊長を任されたのは…
マーヴェリックは飛ばず、教えを叩き込んだ若い奴らに託す…って展開でも良かった気もするが、だけどやっぱり本作はトム・クルーズの映画。彼が先頭に立って飛ばないでどうする!?
果たして、マーヴェリックやルースターら若いパイロットらは、ミッションをクリア出来るのか…?
マイルズ・テラーの風貌がかつてのグースを彷彿させる。『セッション』のしごかれ青年のイメージはもはや無く、男臭いマッチョメンになって驚き!
他の若いパイロットたちのドラマがちと薄かったのは残念。が、前作は若手の登竜門。今回もこの中から誰が飛び出していくか…?
残念ながらケリー・マクギリスとメグ・ライアンは登場しない。メグの役は死んだ事になってるし、ケリーに至っては触れられもしない。マーヴェリックと気まずい別れでもあったか…?
今回の相手役がジェニファー・コネリーで良かった。トムは歳を重ねても若々しいが、ジェニファーも美貌が衰えない若々しさ。いい女の魅力たっぷりで、ベタだけどトムと並ぶと美男美女の画が立つ。
今現在のケリーやメグだったら、こうは…。(失礼!)
『トロン:レガシー』『オブリビオン』で卓越したCG技術とアクション演出を見せ、『オンリー・ザ・ブレイブ』で熱いドラマを描いてみせた監督コシンスキー。
“伝説機”の続編の操縦という難ミッションを、見事やってのけた。
熱いドラマに胸打たれ、ド迫力のアクションに大興奮!
そう、『トップガン』と言ったら、迫力のドッグファイト!
前作のドッグファイトも迫力充分だったが、それでも撮影技術が追い付かない難しさがあった。
だが、本作は格段に技術が進歩。前作とはレベル違いの迫力、臨場感。
CGは極力使わず(ミサイル爆破などは例外)、ドッグファイト・シーンはほとんど本物映像。
ドローンやコックピット内にカメラを取り付け、トムや他のキャストらも実際に操縦。
スクリーンから見た彼らの姿、空…全て本物。そう思うと、本当によく大事故が起きなかったもんだ…と思う。
稀代のエンターテイナー、トムの偽りナシ、リアル志向。本物の最極上のエンターテイメントをお届け魅せる。
トムのこだわりとド迫力の飛行体感は、是非…いや、絶対に劇場大スクリーンで!
私はトムと一緒に、戦闘機に乗って空を飛んできた。
熱いドラマと迫力のスカイ・アクションのみならず、意外やユーモアもあり。
嬉しかったのは、前作を彷彿させるシーン。序盤、若いパイロットたちがやんちゃを起こし、その相手が翌日教官でした…なんてのはまさしくまんま。トムの立場が変わっただけ。
お約束的なサービス・シーンのビーチバレーも勿論。にしても、若いキャストに見劣りしないトムの鍛え上げられた肉体美はやっぱりスッゲェ…。
終盤の展開もおおよそ予想出来る。
ミッション自体は成功するも、危機に陥ったルースターを助ける為、マーヴェリックが被弾。
墜落したマーヴェリックの危機を、今度はルースターが助けに。
敵地真っ只中からの二人の決死の脱出。
この時乗った“古代の遺物”に、前作ファンなら感激モノ!
オンボロだって、飛べる。闘える。
その勇姿はまさしく、マーヴェリックそのものだ。
やはり彼は生粋のパイロット。トップガン!
弾もフレアも切れ、撃墜確実の絶体絶命。
その時助けに現れたのは…!
分かっていても、最高に胸がすく!
スリル! アクション! この迫力!
友情! 和解! 熱いこの感動!
有無を言わせぬ完璧最高の、これぞエンタメ映画!
36年ぶりの続編を、待った甲斐があった。
3年越しの公開を、待った甲斐があった。
ファンも作り手も一心同体の大満足!
亡くなった仲間も喜んでくれるに違いない。劇中のグースも。故トニー・スコットも。(EDのトニー・スコットへの追悼コメントがまた涙腺を刺激する…!)
トムには最大限の敬礼で称えたい。
今回も劇中でサングラス、白T、革ジャン、ジーンズ、バイクの変わらぬ80年代スタイルもばっちりキメ魅せてくれると同時に、
若い奴らを立て、自分も美味しい所を魅せる。
そして、全く一切燃え尽きぬ事の無い、映画への情熱。
プロである事、その為に困難を乗り越え、努力を惜しまない事。だからスターであり続けられる。
トムを見てると本当に、不可能など無いと思えてくる。
トップ中のトップ。
トムこそ、トップガン! 永遠に。
近大さんのレビュー拝読。知らなかったことばかりで読んでとても嬉しい、というか感動しました。トムのこの作品に対する思い入れ(アイスマンなど)がよくわかりました。ありがとうございます。
近大さん、コメントありがとうございました。
ペニーは、やはりしれっと登場してきた新キャラなのですね。
そうなんですよ。前作であれほど強烈な印象を残したケリー・マクギリアス演ずるシャーロットが完全にスルーされていましたよね。
最初、まさかあれがシャーロット?かと勘違いすらしていました。
にしては、全然似ていないし、何よりもキャラ設定がまるで違うし。
ずっと???となっていました。
かといって二人の出会いまでを描くと、物語が冗長になるし。
あそこはしれっと登場させるので正解でしたよね。
にしても!まさに直球王道の素晴らしい作品でしたよね。
近大さん
コメントへの返信を有難うございます。
分かります!
私達映画ファンに素晴らしい作品を届けてくれたトム様、そして映画制作陣の皆さんに、拍手喝采を送りたい 👏
近大さん
長年の熱い想いで熟成された作品だったのですね。( 未だパンフレットをきちんと読んでいません。。)
近大さんの熱いレビューを読んで、昨日劇場で体感した興奮が蘇ってきました。