「今更トップガン?と観る前は思ってたのに「デンジャーゾーン」が流れた瞬間に涙腺崩壊。最後まで涙止まらず。前作を未鑑賞でも十分楽しめる。が、前作の落とし前を付けつつ実は“オジサン頑張れ”という映画なのだ。」トップガン マーヴェリック もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
今更トップガン?と観る前は思ってたのに「デンジャーゾーン」が流れた瞬間に涙腺崩壊。最後まで涙止まらず。前作を未鑑賞でも十分楽しめる。が、前作の落とし前を付けつつ実は“オジサン頑張れ”という映画なのだ。
①1986年製作の『トップガン』は実は名作でも傑作でもなく映画としては凡作と言っても過言ではない。確かにトム・クルーズをトップスターに押し上げたし、当時としては珍しかったケリー・マクギリス扮する女性教官も凛々しくてカッコ良かったし、まだタラコ唇でなかったメグ・ライアン(『Harry Meets Sarry』でスターになる前)は本当に可愛くて注目されたし、でも、同じ海軍の訓練生を描いたものとしては同じ時期に製作された『愛と青春の旅立ち』の方が映画の質としてはずっと優れていた。当時のレーガニズムを背景に好戦的であると批判されたし、MVみたいな映画(確かにヒット曲続出)だと揶揄もされた。②然しだ。30年という月日を経て若い俳優達に囲まれてすっかりオジサン顔(と言うか私より一つ年下なので60歳だよ)になったトム・クルーズを見ていると、自分が経てきた30年という月日をいやが上にも振り返ってしまうと共に、60歳になっても(スターだから当たり前ながら昔の60歳に較べると遥かに若いし、ジェニファー・コネリーとのラヴシーンも全然違和感無いし)こんなに頑張っている姿を見ると自分もまだまだ頑張らなくては、と勇気づけられるし、こんなオッチャンに成れるものなら成りたい、と思わされる。③もう、映画自体の批評は後回しにしても、若い人達に嫌われても、リアルタイムで前作を見、また同じ30年という月日を経てきたものとしては先ずその事に泣かされてしまう。初めはアイドルでしかなかったトム・クルーズやジェニファー・コネリー(それにしても美貌が衰えないなぁ)が30年経って今だに第一線で活躍するトップスターとして生き残っていることに感無量。トム・クルーズは80年代のヤングアイドル達(確かブラット・パックと呼ばれていたっけ)の中では特に目立った存在ではなかったのに(ロブ・ロウや、マット・ディロン等の方がスターになると思われていた)、彼らの中から一頭抜きん出た上に、還暦を過ぎても未だにトップスターとしての地位を維持するなんて当時からすれば想像も出来なかった。④前作の『トップガン』では若さとガッツだけが取り柄の向こう見ずな若者でしかなかったのに、本作では出世よりも現場を選び、年下のスタッフに信頼され安心感を与え、上官(エド・ハリスは流石に老けたねぇ)に逆らっても信念を通す反骨精神を忘れず(でも跳ねっ返りではなく年齢に似合った冷静さと落ち着きを身に付け)(それだけ修羅場をくぐってきたからこそ)、常に前線で実戦を経験した者だけが持つ説得力と貫禄を兼ね備え、でも若者たちに混じっても浮かず恋が再燃しても可笑しくない若さと愛嬌もあるという本当に良い年の取り方をした“オジサン”を演じて画になる本当に懐の深い俳優になったものだ。⑤と、昔語りはこの位にして、本作は映画としても前作よりずっと上手く出来ている。(ミリタリーの事には疎いので場違いや変な用語を使っていたらご免なさい)ドッグファイトや挿入歌が全面に出てドラマとしては薄っぺらかった前作に比べずっと成熟した脚本になっている。勿論、経験豊かで頼りになる軍人で、でもグースの死のトラウマに未だに縛られている複雑なキャラクターをトム・クルーズが演じられるという前提があっての脚本だけれども。演出もシャープ。ミッションに選ばれた12名の若きトップガン達のそれぞれの個性もくっきりと描き分けられているし、よくある半目・反発・ライバル意識から友情や団結心に変わっていく過程も自然に描かれていて好感がもてる(個人的には一見トップガンには見えないボブがお気に入り)。前作では最後までライバルだったアイス(懐かしや、ヴァル・キルマー)(本作ではルーターとハングマンとのライバル関係に投影されている)との30年に渡る友情を感じさせる二人の演技にもまた涙💧。周りの上官や下士官等に扮した俳優陣も好演。上で述べた様にミリタリーものには疎いけれども訓練シーンの迫力には圧倒される。反面、若いトップガンでも失神するG10に本当に60近いオッサンが耐えられるの?(自分を引き合いに出してます)とか、本番の攻撃(二つの奇跡)が一発で決まるのはご都合主義でないかい?(ただ緊迫感がただならないので正直余り気にはなりませんが)、撃墜されたマーヴェリックとルーターとが敵の基地から脱出するのがまるで“ミッション・インポシブル”みたいな?というところは気になる。最後、敵機に打ち落とされようという瞬間ハングマン(予想通り)が助けに来るというのはこういう映画にはお決まりの展開で文句を言う気はないけれども意外性がないのも事実。ミッションの本番が始まるまでの緻密な展開がミッション成功後やや粗っぽい展開になってしまうのが不満といえば不満だが、ともかくお陰でマーヴェリックとルーターとの確執が無くなり疑似親子になれたので善しとしましょう。⑥物議をかもしたバッジの問題もちゃんと日の丸と台湾国旗になっていたし。コロナ禍の間に国際情勢が変化した(中国の国際社会における政治的・経済的地位の低下)等関係しているのかも知れないし、劇中に出てくる“ならず者国家”ってどこ?とか気になる上、それこそオジサン連中はこういう問題を議論するのが大好きな人種なのではありますが、ここは映画のレビュー欄なので止めておきます。⑦敢えて言えばアクションシーン(訓練シーン・実戦シーン)の迫力に比べれば人間ドラマの部分がやはり若干弱くてバランスが悪いという難点はあるけれども、これだけ予想外に泣かしてくれた(30年という歳月に思いを馳せらせてくれた)のと、最後に流れるレディ・ガガ(大好き!)の主題歌にモロ感動したので⭐一つ分オマケします。