「生半可なものは作らないという覚悟とプライドを見せつけた圧巻すぎる復活」トップガン マーヴェリック SGさんの映画レビュー(感想・評価)
生半可なものは作らないという覚悟とプライドを見せつけた圧巻すぎる復活
待ち切れずに公開初日のレイトショーに飛び込んだ。
エンドロールの後、場内では拍手が沸き起こった。
トム・クルーズとジェリー・ブラッカイマー(トムとジェリーやん)から、続編を36年も待ち望んだ世界中のファンたちへの満額回答。
いや、その期待を遥かに超えてきた弩級の復活だ。
作品全体から"生半可なものは作らない"という覚悟と心意気とプライドがみなぎっていた。
ケニー・ロギンスの「デンジャーゾーン」で幕を開け、お馴染みのレザージャケットを纏ったマーヴェリックが、夕陽をバックに滑走路のF/A-18とバイクで並走する。かつての相棒グースや宿敵アイスマンとの友情も描き、オールドファンには胸熱な前作の遺産を踏襲しつつも、仲間の死に苦悩し成長し、教官として新たな世代へとバトンタッチを迫られる天才パイロットの物語として深みを増している。
マーヴェリックに遺恨を持つグースの息子ルースター役に「セッション」のマイルズ・テラーを得て、その葛藤と関係性の行く末にもぐいぐい引き込まれる。
一方でオジさんになり多少思慮深くなったものの、やっぱり根は無鉄砲で命知らずなマーヴェリックに心が躍る。
そして何といっても圧巻はCGを使わずあくまで実写にこだわったリアルかつド迫力の飛行シーン。
トムをはじめ演者たちはなんと5ヶ月に渡る飛行訓練を経て、実際に超高速飛行する戦闘機のコックピット内で自体重の何倍もの重力負荷がかかるなか演技しているのだから恐れ入る。CGでは演じきれない演者たちの顔色や表情の自然な変化こそが、人体の極限の過酷さを物語っている。
観ているこっちも身体を右へ左へ揺らし、アドレナリンが湧き出てくる。
観終わった後のカタルシスたるや。
前作公開は86年、私は高校生だった。
リアルタイムで一番映画を観ていた時代ではあるものの、80年代はポップで人気先行、エンタメ要素に振り切った作品が多く、個人的には60-70年代の映画の方が好みだった。
根が暗いもので。
しかし良い意味で馬鹿馬鹿しいくらい楽しかった。
映画という枠に囚われず、音楽やファッションにまで影響を与え、若者や子どもたちにも多くの夢を与えたカルチャーそのものだったし、その後の時代を牽引する新たなスターたちを数多く輩出した時代でもあった。
この前作で大ブレイクを果たし、スター街道をひた走ってきたトム・クルーズ。彼自身の歴史が詰まっているこの作品に賭けた想いと、前作を観て育ったファンの熱い想いとが見事に合致したエモーショナルな瞬間だった。あっぱれ‼︎
しかしこれに触発されて、日本でも「ベスト・ガイ」(織田裕二主演)の続編を作るのだけはやめておいた方がいい。