劇場公開日 2020年7月31日

海辺の映画館 キネマの玉手箱 : 特集

2020年7月27日更新

日本映画界の“レジェンド”大林宣彦監督 常盤貴子、稲垣吾郎ら俳優が
敬意を寄せる理由とは?平和を願い、20年ぶりに尾道で撮影した新作を解説

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映画監督・大林宣彦、82歳。日本映画界が誇る“レジェンドのなかのレジェンド”による最新作「海辺の映画館 キネマの玉手箱」が、7月31日に公開を迎える。

大林監督が、約20年ぶりに故郷である広島・尾道で撮影した物語には、切なる“平和への希求”と“映画への愛”が込められている。

「ねぇ、映画で僕らの未来変えて見ようよ」。大林監督からの“最期のメッセージ”となった集大成――映画を志す者ならば、見逃す手はない。雨が降ろうが槍が降ろうが、何をおいても鑑賞するべき一作だ。


【日本映画界の伝説】大林監督がレジェンドたる由縁とは?
「時をかける少女」など尾道三部作 “余命3カ月”宣告も衰えぬ創作意欲

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絶大な人気を博す「時をかける少女」など “尾道三部作”で知られ、CM、ドラマ、ミュージックビデオなどジャンルを問わず活躍した大林監督。

映画をはじめとする文化の発展に貢献し、2019年には文化功労者に選出。数え切れぬ功績を残す名匠を、映画人は敬愛してやまない。本項目では、彼が尊敬を集める理由を紐解いていこう。


■「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」 絶大な人気誇る尾道三部作

大林監督は “映像の魔術師”と称されてきた。卓抜した映像センス、尽きぬ映画への情熱、果てぬ表現への探究心が、彼自身を形作っている。

1950~60年代には自主映画の製作に明け暮れ、60年代後半からはCMディレクターとしても活躍した。当時のテレビCMは“おトイレタイム”と呼ばれ、いささか無視を決め込まれていた時代。

そこで大林監督は、映画やドラマのような演出を取り入れ、チャールズ・ブロンソンを起用した「マンダム」(う~ん、マンダム)など野心的な“作品”を連発。3000本以上を制作し、今日の日本では当たり前になった“映像作品としてのテレビCM”を確立させた。

大林宣彦監督(左)
大林宣彦監督(左)

そして80年代に入り、自身の故郷・尾道での映画製作を始める。幼馴染の少年少女が階段から転げ落ち、お互いの体と心が入れ替わってしまう「転校生」、ラベンダーの香りをきっかけに“タイムリープ”する少女を描く「時をかける少女(1983)」、ある少年の恋をノスタルジックに描出する「さびしんぼう」。

それら決定的な作品群は“尾道三部作”と呼ばれ、熱狂的な人気を博した。一貫して平和思想と人間愛を描く物語、詩的かつ幻想的かつ実験的な映像、そして独特な語り口など、その作風は“大林ワールド”とも称されている。

成海璃子、山崎紘菜、常盤貴子が出演する本作の一場面
成海璃子、山崎紘菜、常盤貴子が出演する本作の一場面

■がんにより“余命3カ月”宣告 それでも、映画を作り続ける

年齢を重ねてもなお、衰えるどころかさらに才気をほとばしらせていく。ところが16年8月、ステージ4の肺がんと診断。最終的に「余命3カ月」と宣告され、死と向き合うことになる。

死を目の前にしても、大林監督の胸に灯る炎は消えることがなかった。抗がん剤治療と、“不屈”としか言いようがない精神力により映画製作を続け、本作の公開予定日だった4月10日に永眠した(新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の公開日が延期となっていた)。

その身を映画に捧げる姿勢こそが、同監督がレジェンドたる所以なのである。

本作は、大林監督の人生のすべてが収められた集大成的作品である。“遺言”となったメッセージの数々を、可能な限り多くの観客に受け取って欲しいと思う。

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【予告編】「また見つかった」「何がだ?」 82歳の名匠が放つ渾身の一作

【物語】渾身の最新作は20年ぶりに尾道で撮影!
閉館する映画館、3人の若者、タイムリープ…作品に込めた“平和への希求”

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大林監督を説明するうえで、“反戦への思い”は避けて通ることができない重要なファクターだ。「この空の花 長岡花火物語」(11)、「野のなななのか」(14)、「花筐 HANAGATAMI」(17)と、近年の“戦争三部作”が記憶に新しい。

最新作「海辺の映画館」は、どんな物語なのか。そして、何が描かれているのか。


■故郷・尾道で撮影する、大林監督版「ニュー・シネマ・パラダイス」

本作のキャッチコピーは「映画と踊れ!」である。映画の歴史と戦争・暴力の歴史を交錯させながら描く、誰も体験したことがないエンタテインメントが誕生した。

尾道の海辺にある映画館「瀬戸内キネマ」が閉館を迎えた。最終日のオールナイト興行「日本の戦争映画大特集」を見ていた3人の若者は、突如として劇場を襲った稲妻の閃光に包まれ、“スクリーンの世界”、戦争の時代にタイムリープする。

戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦、そして原爆投下前夜の広島にたどり着いた3人。そこで出会った移動劇団「桜隊」の人々を救うため、運命を変えるべく奔走する。

若者3人を熱演する(左から)細田善彦、厚木拓郎、細山田隆人
若者3人を熱演する(左から)細田善彦、厚木拓郎、細山田隆人

■物語に宿るテーマ 3人の若者が見た、映画と戦争の歴史とは

映画と戦争の歴史をたどる若者3人の姿を通じ、大林監督は“平和”を訴える。これからの世界と未来そのものを形作る人々、そして未来の担い手である新世代の人々に対し、同監督が遺すメッセージとは……。本編を目撃し、その目で確かめてほしい。

ひとつ言えることは、「面白いかどうか」「巧みかどうか」という水準をはるかに超越した“歴史的意義”を感じ、ひたすらに圧倒される。「この人が出てるのか! あ、あの人も!」と驚くようなキャストが、入れ代わり立ち代わり登場する点も見逃せない。

物語は玉手箱からたまらず飛び出したかのような躍動を見せ、五感は経験したことのない刺激を受け取る……。「映画と踊れ」。なるほど、なんと巧みな惹句(コピー)だろうか!

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【やはりレジェンド】俳優たちが大林監督に寄せる“愛”と“敬意”
常盤貴子、稲垣吾郎、武田鉄矢、南原清隆らが語る

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大林監督はこれまでに40本を超える映画を製作している。長年の映画人生で、出会った俳優たちは数しれず。多くの俳優やクリエイターたちが、彼に愛と敬意を寄せている。

この項目では、その一部を抜粋して紹介する。大林監督がいかに慕われているか、心から感じられるものばかりだ。


常盤貴子(近年の大林監督作に欠かせない“ミューズ”) 「次回作のためにタップダンスの練習をと、どんな映画かも分からないのに、ただひたすらに練習を続けた俳優部。撮影時期が延びたと言われ、テンヤワンヤ。私も、一度は諦めたものの、二転三転四転五転。出られる!と決まった時の喜びは忘れられません。『大林組』全スタッフ、キャストと共に、今できる限りのパフォーマンスと、想像力で、『大林宣彦』という大好きな監督の現代アートの一部を担えたことは私の誇りです」
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長塚圭史(「花筐」などにも出演) 「ささやかな日常を描いた僅か数行のト書きの一場面を、 寺島咲さんと共に監督の口立てで演じさせて頂いた。撮影後、帰京を急ぐのか尋ねる監督。今日中に帰ると答えると、監督の目が光る。『もう一役お願い』と小山内薫役を渡される。勿論現場も大わらわ。相手役は常盤貴子。妻である。彼女は急遽撮影初日の前日にまさかの私を相手に芝居をすることに。早口で演じてと日が暮れるまで撮影をして、新幹線に飛び乗った。夢のような1日であったが大林映画が生まれる予感にワクワクした」
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稲垣吾郎(「ゴロウ・デラックス」以来の縁) 「時空を超え、思想を超え、宇宙をも一気にとび超えていく世界観。大林監督でなければ1本の作品に納めることは不可能だったと思います。みずみずしく自由に広がる想像力には驚かされるばかりです。大切なメッセージを届けてくださり、ありがとうございます」
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武田鉄矢(「花筐」などにも出演) 「本作品では、何と驚く勿れ『坂本龍馬』役での出演です。勿論、人生最後の『龍馬』役です。大林監督はどうやら後生の我らに映画の見方を懸命に教えておられるようで、この作品、映画に対する監督のラブレターのような作品ですよ」
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南原清隆(08年の「その日のまえに」に主演) 「『ナンチャン、僕達がね幼い頃 口すさんでいた童謡でね、これでちょっと踊ってみてくれる?』。すると監督と(妻で映画プロデューサーの大林)恭子さんが二人仲良く撮影現場で歌いだしました。私はそれを必死にその場で覚え、そして舞いました。そんな永遠の映画が夢中になって創った、エンターテインメントと平和への祈りのこの映画。皆さんはご覧になってどんな人の顔が浮かんでくるのでしょうか」
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高橋幸宏(ミュージシャン) 「初稿の本を頂いて、その内容、僕の役どころに驚き、正直戸惑いました。友情出演とはいえ、役者でもない自分にはいささか重荷と思える重要な役で、現場で共演者の方々をはじめ関わる全ての方々に迷惑をかけることが容易に想像出来たからです。でも、今回は覚悟を決めました。監督のお役に立てるのなら、なんでも精一杯やろうと……。果たして、出来上がった作品を観た僕は、ただただ圧倒されました。監督の映画に対する情熱と沢山の大切な思いが、今まで見たこともないカタチでスクリーンに映し出されていました。重過ぎず、しかしある時は深く神妙に、さらにあくまでも大林映画らしい光輝くエンターテイメントとして。きっと皆さんを魅了する事と思います。……映画は永遠ですね……」
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