劇場公開日 2020年7月31日

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「映画はこんなにも自由になれる」海辺の映画館 キネマの玉手箱 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画はこんなにも自由になれる

2020年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画ってこんなに自由でいいのだ。本作と一つ前の『花筐 HANAGATAMI』を見ると、大林宣彦監督は全盛期を迎えていたのではと思わされる。その斬新なセンスの筆がノリまくっているし、とんでもないエネルギーに満ちあふれている。『HOUSE』の頃から実験精神に溢れた作品を作り続けていたが、その精神が晩年ご病気されて衰えるどころか、爆発的に高まっているように思える。
大林監督は「ウソから出たマコト」を追求し続けてきた方だ。そんな監督が最後に選んだ題材が「戦争と映画」だった。戦争を伝えるために多くの作家が映画を使った。しかし、どれだけリアリティを追求しても戦争の本当の悲惨さには届かなかった。大林監督は、リアリティを追求する姿勢とは真逆のアプローチをしかけて、「マコト」を現出させようと試みている。大林監督のアプローチは、映画の可能性を大きく押し広げるものだ。リアリティの枷から解き放たれた時、映画という言語はさらなる発展をするのだと思う。大林監督の残した功績はものすごい大きい。

杉本穂高