「大林宣彦監督の遺作であるこの作品について語るのは悩ましい。」海辺の映画館 キネマの玉手箱 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
大林宣彦監督の遺作であるこの作品について語るのは悩ましい。
①映画的で実験的。最後まで良い意味でも悪い意味でも映画青年らしさを持ち続けた人だったのだなぁと思う。最初は「ど昭和」(高橋幸宏がいくら宇宙から帰って来ようと)の雰囲気と学芸会のようなミュージカルシーン(どうも日本映画とミュージカルとは相性が悪いようだ)とで『果たしてついていけるかなぁ』と不安があったが、段々監督の映画愛に溢れた世界が不安を消し去ってくれる。映画の、特に日本映画の記憶があちこちに散りばめられている。②一方、私は主張する(作り手の思想・考えを押し付けてくる)映画は余り好きではない。その映画を観てどう感じるか、考えるかは観客に委ねて欲しい。世界が保護主義に傾いている現代は世界第二次大戦後、もっとも世界戦争勃発に近い時代かも知れない。だから反戦思想は時代意識として一層必要であろう。だがそれを正面きって謳われると退いてしまう。映画の中で述べられる歴史認識にも同感できない点もある。戦争の責任を何でも「国」に転嫁するのも如何なものかと思う。③そういう訳で、とても映画的な大林ワールドを楽しめた反面、監督がこの世に残したい想いが強すぎて、アンビバレントな印象を持ってしまう映画です。
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