「大林監督の映画愛をもれなく受け止めました」海辺の映画館 キネマの玉手箱 エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
大林監督の映画愛をもれなく受け止めました
今年4月に逝かれた大林宣彦監督の遺作にして集大成。今年の日本映画のベストワンであります。
ここには戦争の愚かさを伝えるという強い思い、そして何より映画への深い愛が在りました。
今日で閉館となる尾道の海辺の映画館。オールナイトの戦争映画特集。煙草と便所のにおい。私もこの映画館の客席に座る。
開始早々『今日も私は映画の中に入る。自分が自分であるために。』なんて台詞にウルウルしてしまう。これは私だけではないだろう。映画哲学とでもいうべき言葉が地雷のように埋め込まれ、それを踏むたびにグッとくる。
ここまで刻むかと思うほど細かく刻んだ映像に大量の台詞。これを鳴り止むことがない音楽に乗せて繋いでいく。もうノリノリだ。そしてスクリーンプロセスを多用した非現実感が『映画は映画である』と主張する。まさに大林ワールド。
ホント変わらないスタイルで嬉しくなる。何度もリフレインされる『嘘から出たまこと♪』というフレーズ。映画という作りものを通じて真実を語ろうとする大林監督の一貫した姿勢をシンプルに表現した素晴らしいフレーズだと思う。
映画の中に入り込む主人公の三人。戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦、そして原爆投下前の広島。過去の悲劇を変える術は無いが、未来は変えられるという強いメッセージが在った。
大林監督との最後の真剣勝負を堪能した。とてつもない思いが込められた179分だった。清々しい感動があった。心地よい疲労感が残った。
映画に愛をこめて❤️
麒麟がくる で熱演の片岡鶴太郎さん、異人たちとの夏 で大林宣彦監督が抜擢し名優になりましたね。三浦友和さんもおかしなふたり などの作品で。魔術師でしたね!