「映画に殺される」劇場 ポンチョさんの映画レビュー(感想・評価)
映画に殺される
彼女(サキちゃん)の部屋に転がり込んで来た主人公(ながくん)のヒモっぷりが、徹頭徹尾描かれてる映画です。
底辺の男が、更に最低になり下がるまでが、余すところなく描き切られておりました。何が最低かって、ながくんは自分の脆いプライドを守る為に、いたずらにサキちゃんを傷つけていくんです。
そしてこの映画は、ヒモ時代の私自身の過去を追体験するものでした。あまりの心理描写のリアルさ。そして自分の恥部を晒された衝撃に、途中何度か呼吸が止まってしまいました。
映画に処刑されている!このままでは映画に殺される!と。
レビューするまでに時間がかかりました。
いま落ち着いて考えるに、この物語のひとつの不幸は、お互いに(ながくんとサキちゃん共に)ジェンダーに縛られているところにあるのではないでしょうか?
社会が男に求める役割と、自分の現状との乖離に苛まれ続けるながくん。
自分の才能に自信が無ければ、夢は追えない。片や夢追い人は、収入には乏しい(ながくんの場合ゼロ)。女性を養うという、古来より男性に与えられたジェンダーとしての役割と、自らのプライドとの間で苛まれるながくん。繊細な揺れ幅の中で、サキちゃんを否応なく傷つける。
逆に自分の夢をアッサリと捨て、尽くす女としてながくんについて行く道を選んだサキちゃん。ここにもジェンダーが影を落としている。
「東京の片隅に生きる男女のリアル」という表のテーマとは別の、
「ジェンダーの役割がもたらした不幸」が、この映画の裏テーマか?
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