劇場公開日 2020年7月17日

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「主人公がクズ過ぎる」劇場 さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0主人公がクズ過ぎる

2020年8月13日
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ダメだ、今年自分は邦画と相性が良くない年なのかもしれません(^_^;)

「火花」を書いたピース又吉直樹の小説を原作とした、山崎賢人と松岡茉優共演の恋愛映画。

内容は火花と同様に、ダメダメな夢と挫折を切なくシリアスに、時にコミカルに描いた内容です。
又吉は胸がつまるけど人々の心に沁みるような内容を得意としてるのかもしれませんね。

まず良かったのが山崎賢人と松岡茉優の演技。
この映画において山崎賢人は決して上手いわけではないのですが、このだらしない感じと人見知りなところが彼の不器用な演技にピタリとはまっていた気がします。彼って存在感はあるけど、台詞回しは個人的にあまり上手いと思えずに好きじゃない時が多かったのですが、この情けない感じの風貌ボソボソと喋る感じがこの主人公に合っていました。

松岡茉優はいつも通り上手いのですが、このヒロイン役に関しては役と憑依したかのようにリアルな演技をしていて圧巻です!
前半の無垢で明るい性格と暗い時のギャップが本当に見事です。

あと個人的に良かったのが一番最後の演出ですね。
ネタバレになるので詳しくは話せませんが、まさしく「劇場」というタイトルにふさわしい終わり方と演出をしていて「上手いなぁ」と感心させられました。

自分の一番輝いてた青春時代の光と影を描いた内容なので、好きな人が多いのは理解できますし自分も好きになれる...はずでした。

何故自分がこの映画にはまらなかったかと言いますと、一番は主人公の人物像ですね。
とりあえず、人間的にダメな部分が多くて良いところが見付けられませんでした。
良いところを見付けても、既に手遅れになっていた時期でしたし、何で松岡茉優が山崎賢人のこと好きになったのかが全く理解できませんでした。

とにかく主人公のクズさには結構頭に来て、その度に観るの止めようかと思ったくらいです。
だって、ヒロインのお母さんの悪口をヒロインにぶつけるし、居候してる身なのに光熱費を払うの頼まれても断るし、嫉妬でヒロインのバイク壊すし、おまけに酔っぱらったら何故か松岡茉優の部屋にブロック持ってくるし、クズな一面を観る度にぶん殴ってやりたいと思いました!

あと、松岡茉優との出会い方も山崎賢人のストーカーまがいの行為をしてナンパして付き合いはじめる辺り、何で松岡茉優は山崎賢人に惚れたんだろうと考えてしまいます。

松岡茉優もそんな山崎賢人の奇怪な行動を笑って許してしまうわけですが、まぁクズな主人公といつまでも付き合うことで次第に壊れていくわけで、そんな松岡茉優の姿は観てられませんでした。
何でしょう、前半は自分には松岡茉優が山崎賢人にとってただ都合の良い人物にしか見えなくて松岡茉優の人間性も理解できませんでした。

まぁ、劇中の山崎賢人のような女に金をたかる草食系クズな男は現実にいるのかもしれません。
ただ、自分はクズな男をあまりにもリアルに描きすぎてしまうと嫌悪感しか生まれないです。

一番の疑問点が、宣伝文句に「夢を叶えることが君を幸せにすると思ってた」という肩書きがあるのに、劇中ではそれが微塵も感じられないんです。
それが感じられれば、自分はこいつがどんなにクズでも応援する気になれたと思います。
しかし、主人公が彼女を幸せにしたいという発言も台詞にもモノローグにも出てこないし、主人公にとって都合の良い女にしか思ってないんじゃないかと思ってしまいます。
それが、この映画における自分の最大のノイズでした。

まぁ、終盤の方でようやくヒロインに良いところを見せていくのですが、その時には自分の心は焼け石に水でした。

主人公に全然共感できないので、途中まで今年ワースト候補になるかと思ってました。

ただ、終盤に主人公はクズなりに反省もし始めて、ヒロインとの関係もこの内容にしては納得出来る結末で終わりにしてくれたので、終盤でだいぶ持ち上がりました。

又吉直樹は、恐らく意図的にクズな主人公像に設定したのだと思います。
こういったやつもいるだろうし、自分にも当てはまる所もあったりもします。
ただ、自分はそれをやり過ぎてしまうと嫌悪感ばかり抱いてしまうので好きではありません。

さうすぽー。