劇場公開日 2020年7月17日

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「恋愛舞台の苦悩。」劇場 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0恋愛舞台の苦悩。

2020年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

原作は読んでいないのだが、タイトルの劇場とは、もちろん登場する下北沢の
舞台のことかと思いつつも、恋愛は舞台劇のようだと思える作りになっていた。
ほぼ二人称のような恋愛舞台は、かなり気味の悪い出逢いから、一緒に暮らす
沙希の部屋まで会話が続き、合っているような合っていないような、とはいえ
夢を追う喜びや切なさを共時する二人には、癒しと笑いの心地良さが常に響く。

こんなろくでなしの男をと、人嫌いでプライドが高く、沙希に対しても悪どい
言動を繰り返す永田だが、自分の夢を彼の才能に準え、懸命に応援支え続ける
沙希のような女性は、おそらく数多くいる。それに支えられ、夢を叶えた男も
数少なくもいるわけで、だから今作はそういう部分での共感度が高いんだろう。
食えない暮らしを支えてくれたひと。いつか食える日がきたならめいいっぱい。

これも純愛なのだと思う。キスもセックスも出てこない二人の暮らしに一筋の
愛欲が添い寝や抱き枕のような触れ合いから感じ取れるところがさすがの演出。
やたらモテる沙希が他人と接するのを、極度に嫉妬する永田の変質度はバイク
を破壊するところや、自身のズルさをブロックで表すようにとことん小賢しい。
単に利用しているだけじゃないか。女をなんだと思ってるんだと思いたくなる。

それでも、彼女が笑っていてくれることがすべて。沙希が笑っていないと、な
ぜか怒られているような感じがした。という永田。そんな生活が徐々に崩れて、
沙希が将来を悲観し酒に溺れるようになっていく。自分のせいと知りながらも
こんな食えない状況で結婚など、安定感のある暮らしを永田が選ぶはずがない。
女をダメにする男と、男をダメにする女。それには未来はないのだろうか?と
他の道を選択しながらも、なかなか離れられない二人。これもある意味依存だ。

後半の映画ならではのマジックも良かったが、個人的には後半で、沙希が言う
永くんはなにも変わってない。変わったのは私。歳をとって将来を考えたから。
という台詞が辛かった。好きになったのも、支えてきたのも、全て自分の責任。
だからあなたはあなたのままでいい。どうか夢を叶えて。私はもう無理だけど。
という想いが透けてしみる。自分が選んだ相手との経緯も別れも相手のせいに
しない潔い生き方の沙希を、この先、うんと幸せにできる誰かが愛してほしい。
とはいえ恋愛は、また同じようなひとを選んで、繰り返すことも多いんだけど。

永田は、永田なりの決意と、この先の活躍を、彼女に見せていってほしいなと
願いながら、この舞台が終わっても苦悩はおそらく続いていくことを認識する。

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ハチコ