「"淡々とした描写"と"終盤の大仕掛け"のギャップにやられた!」劇場 せき(名前変えました)さんの映画レビュー(感想・評価)
"淡々とした描写"と"終盤の大仕掛け"のギャップにやられた!
2作目となるピース又吉の小説映画化は、
劇作家として成功を目指す若者の恋と葛藤を描いた青春映画でした!
東京の片隅で出会った一組の男女が共依存に陥り、次第に関係を崩壊させていく様子を描きます。
淡々とした描写と主人公のモノローグを中心に展開するストーリーは、
過剰な演出を排除してるにも関わらず、終始心を捉えて離しません。
また、主人公2人がボロボロになっていく様子を見守るしかできない中盤以降は、
ひらすらに辛くなるシーンのオンパレード。
才能の無さを自覚してるが故に、沙希の優しさを拒絶してしまう永田の気持ちも、
自分と向き合わない永田に冷めていく沙希の気持ちも痛いほど理解できるからこそ、
もう今すぐ別れてくれ…と感じずにはいられませんでした。
でも、自分に自信を持てない2人は依存し合うしかなかったんだろうなあ…と思うと余計切なくなる。
沙希を爆笑させていたネタがもはや通用しなくなる悲しさ、
酒に溺れないと顔を合わすこともできなくなる二人の不和など、
関係の修復は不可能だとしか思えないシーンが連続しますが、
極め付けは、永田が沙希を自転車に乗せて夜道を走る長回しのショット。
詳しくは伏せますが、あんなに痛々しく感じるチャリの2人乗りは見たことありません…
舞台挨拶で山崎賢人が「一番見てほしいシーン」と語るこの場面、ぜひ注目してご覧ください。
彼については、漫画の実写化をコンスタントにこなす俳優というイメージが強かったのですが、
今作での渾身の演技を見せられたら、認識を改めなければいけません。
これからも素晴らしい演技を沢山見せてくれると思うと今からワクワクしています。
松岡茉優に関しては演技力を今更褒める必要もないと思うので、個人的にたまらなかったポイントを幾つか。
悲しみを取り繕った時の乾いた笑い声、
胸中を明かす時の、力のこもった低い声、
泥酔した状態で繰り出すエセ関西弁など、
ストーリーに関係なく、彼女の演技そのものを堪能したくなる場面にあふれていました。
最後に言及したいのは、終盤のあの「劇場」シーン。
メタ構造を使って過去との訣別を表現する一連の演出には心底驚きました。
タイトルの意味がここで活きてくるのか!と感心させられること間違いなし。
衝突を繰り返した過去を乗り越え、未来に向けて進み出した2人の今後に幸あれ、
と願わずにはいられませんでした。
終盤のメタ構造を最大限楽しむためには、映画館での鑑賞がベスト。
自分はアマプラで見たことを少し後悔してます…
劇団仲間として永田を支える寛一郎(佐藤浩市の息子とは知らなかった!)や、天才肌のチョイ役を演じるKing Gnu井口理も要チェック!