「シンプルな画から 力強さと人情味を感じる良作」ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)
シンプルな画から 力強さと人情味を感じる良作
まず、アニメ映画の第一印象としてどこを見るでしょう?華やかな予告編?ストーリー性?名のある監督?人それぞれ見てしまう箇所はあると思います。それでも“画”は気になるところではないでしょうか?本作の画は原色を主に使っているのか、それとも使用する色が少ないのかと思うくらいにシンプル。しかも動きも「昔の日本アニメか?」と思うくらいにカクカクしていて、画もカクカクしている感じ・・・。言葉選ばずに例えるなら「チープな画」。しかし、
その画から魅せる本作の力、侮ってはいけない。
ストーリーの舞台はロシア帝国。簡単に説明すると探検家の孫である名家の娘:サーシャは、2年前に北極点を目指し行方不明になったおじいさんを探すために一人旅に出て、途中一緒に探してくれる船と乗組員を見つけ(おじいさんはロシア帝国の英雄とされていたため、捜索して見つけた者に国から莫大な報奨金が出ていた)、北極点を目指す、というものです。
最初に「本作の画はチープ」と表現しましたが、そんな簡素な画から現れる表情がホントに多彩で感情豊か。その中でも“目”の表現が素晴らしい。戸惑う目、力強い目、怒りの目。それだけではない。特に車窓から流れる景色を追う目の動きに感動。こんな細かいところまで表現しているのか。観ていて飽きが来ない。
この監督はなんと“表現力豊か”なことか!
しかし、本作はそれだけではない。事情を知って匿う女店主や、男の中の男な船長と博打好きだが人情ある航海士、やんちゃな船員など登場人物もかなり魅力的。セリフもないモブキャラでも、その“表現力”を活かしており、全体的に人情味のある世界が出来上がっている。しかもその中で大海を知らない名家の少女がもまれ、立ち向かっていく。
諦めないこと、信じ抜くことの大切さを、人情を持って伝えているかのような映画です。この人情が強く押し出されているからこそ、本作の見ごたえを生んでいるのではないかと思います。
シンプルな画に上映時間は81分とお手頃。短いゆえに複雑なストーリー展開はあまりない。しかし、力強さを感じる良作でありました。
あと本作で学んだこと、寒さと飢えは人を凶変させる・・・。うん、気を付けよう。