「尻は押さんでいい」ミッドサマー ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)
尻は押さんでいい
観客の全オトコが叫んだであろうひとこと。
メンヘラ妹の暴走で両親まで失い、自分もメンヘラ真っ盛りの主人公ダニーが、彼氏で若干ダニーのメンヘラぶりに辟易としているクリスチャンとその仲間が計画しているスウェーデン旅行に無理くり同行、メンタル弱っている時に無理やり行くものだから行く前も飛行機の中でも、序盤からもうガタガタ。
クリスチャンの友人たちも表向きは歓迎しているものの、彼らの裏目的のスウェーデンのフリーなんちゃらを満喫するプランがダニーの動向で頓挫気味に。
その中で、皆を招待したスウェーデン人のペレだけはダニーにとても優しく接した。時々地雷を踏みつつも。
そして到着した翌日から、滞在予定のスウェーデンの片田舎、ホルガ村で行われる夏至祭が始まる。それは、クリスチャンやダニーが想像すらできなかった壮絶な儀式で幕を開ける。
序盤はとにかくクリスチャン並みにダニーのメンヘラっぷりに悩まされる。自分で無理やり前に進んでは地雷を踏んで号泣の繰り返し。もうちょっと無理のない選択はできんもんかとイライラする。
クリスチャンもその友人もなかなか曲者ばかりで、ダニーに対して優しい(優柔不断?)だけど行動の端々で狡さと薄情さがにじみ出るクリスチャン、絶対隠し事している優しくて信用できないペレ、この中では唯一まともか?と思わせてやっぱりゲスいジョシュ、もう煩悩しかない感じのウォーロックくん(名前忘れた)。登場人物で感情移入できる人が皆無なのが良いのか悪いのか。
ホルガに入ってからは、夏至祭を疑似体験。なんかすごく意味ありげで、実は気持ち悪って感情を植え付けるだけかと思われる儀式の数々。
お祭り初日でいきなりエンジン全開のビッグイベント(ここは観てのお楽しみ)、その他イベントも盛りだくさん。マッシュ伊藤でお馴染みマジックマッシュ祭り、みんなで静かに青空レストラン、ホルガ版ナートゥ・ナートゥ、スタンドアップ神輿、尻押しワッショイ、ビンゴ大会など。
恐らく両方観た方は似た感じだなーと思われる映画があるけど、そちらが宗教観が強めにあるのに対してこちらは生命に対する考え方、生きることと死ぬことの意味、価値観を強めに描いてる。言いたいことは分からんでもない。ただ人間だけが自然に逆らって生き、死んでいくのはどうなんやろなと。これは自然を運命に置き換えてもいいかも。
最後の笑顔も含めて、結局誰に自分の感情を重ねていいのかが最後まで掴み切れなかった。
大変不安定で気持ちの悪い世界観を、抜けるような青空と素晴らしい自然の中でやってます、というのが売りの映画かと。若干似すぎてしまったかなぁ。