「丁寧と冗長は違う」ミッドサマー 映画読みさんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧と冗長は違う
ネットで話題になっていたから観た作品。
明るいホラー
楽園に見えてホラー
過度に寄り添ってくる理解者がいるというホラー
共同体が幸せを定義するというホラー
そういう試みの作品だというのはわかる。
しかし、そのテーマを表現するための手段が
・先の読める展開
・終始流されるだけの主人公たち
・150分間におけるイベントの乏しさ
・主人公(観客視点)側が常に余裕がない不快感
・映画の頼みとするところが、直球の不快表現
で、映画としては「浅いものを深いように見せる」映画になってしまっている。
正味90分でもやや長い程度の内容で、150分は退屈。
村に到着する37分目から映画を開始してよいし、村の異常さが決定的につきつけられる60分目も開始から15分以内でよい。
序盤の引きとして微妙な「妹と家族の死」は物語のフレーバーとしてしか機能していないので、シド流に言えばプロットポイント1ではなく、60分目でやっとプロットポイント1という脚本なのだ。
その後のシーンも映像表現にこだわっていると言えば聞こえはいいが、物語の行く先や主人公たちの決断が気になっている観客としては「もうこの映像のシーンはいい」「こういうやりとりはいい」と思えてしまい、監督の独りよがりに付き合わされている感じになる。
登場人物のカメラ目線の顔アップも多すぎて、くどい。作家性というより手癖になってしまった悪癖のレベル。
「共同体の怖さ」「村の因習の怖さ」などは、本邦ではいくらでも名作が存在し「初めての概念」にはならないものなので、感想として褒められるところが見つからない。
エンタメ体験の乏しい人たちが奇抜性を持ち上げたくなる、過大評価気味の凡作に思った。