「(長文です)インスタントに「最悪」を味わいたい方にオススメ」ミッドサマー 🎍ふたこ🎍さんの映画レビュー(感想・評価)
(長文です)インスタントに「最悪」を味わいたい方にオススメ
この映画を好きな人はどうかしてると思う。
のに、
私はこの映画を「好き」かもしれないと考えています。
しかし、単純な好きとは言い難い。
例えるなら素晴らしいB級作品に出会った時と同じ感覚です。
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◼️仲間達について
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・メンヘラヒロイン
・優柔不断彼氏
・変態の画家
・お調子者
・真面目くん
がパーティのメンバーです。
ガイドブックに『この作品はヒロインの視点で描かれているから、ヒロインの仲間たちは悪く見える…』ってあって。
「言われてみると、違う視点で見たら男たちは特に嫌な人間ではないな?」と思います。
メンヘラ彼女は「メンヘラになる理由」があったり、優柔不断彼氏は「でも、彼女に付き合ってあげている」だし、お調子者は「お調子者」なだけだし、真面目くんは「勉強がんばれ…焦る気持ちわかるぞ!」となります。
画家を除いて。
あと、仲間達悪い人間ではないかもしれんが、早く村を焼くか帰れ!!!判断力すなわち死以上の恐怖だぞ!!
あと、村の老人が自殺したの見て興奮すんな!バカ!他の客と同じように帰ろうとしろ!んもう!
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◼️恐怖について
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最初から最後までひたすら怖くて「不快!」ってなってひたすら怖かったです。
例えば他のホラー作品は主人公たちに共感してもらうような日常パート挟むんですが、そのようなものはありません。冒頭では赤の他人の揉め事を見て「この作品の人たちみんな嫌な人間だな」と、一切共感せずかやの外で見ている感覚です。
「この作品のスタンスが『共感など求めてない!』という感じなのかな?」と…思っていたら
主人公(以下ヒロイン)の不安や恐怖に同調していきます
冒頭の電話のシーン。恋人の声は聞こえない、ただ表情だけで「男と別れたくないから物分かりのよい女」というのを表現してる箇所。彼女の不安を相まって、彼氏が友達と話しているときにも恐怖を感じました。
で、終盤のセックスシーン以降、だんだん恐怖心が薄れていくんですよね。
この作品は共感させるようなことをしていないのに共感してしまい。そして、あの村が求めている「村全体の共感」に見ている私が引きづられていて驚きました。
最後のシーンでは、ヒロインと共にただ燃え盛るヤシロを呆然と見ていました。
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◼️同調について
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ヒロインの家族の死について。
最初は「へー。家族死んだんだなあ、まあそんなことあるよな」って思っていたんですけど、要所要所で『家族の幻覚』がサブリミナルとして現れるんですよね。
それに引きづられて、どんどん家族のことが怖く・強く印象に残ります。最初に死体を見ただけなら、家族のことなんとも思わないままだったと思います。
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◼️作中のイラストについて
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私は存じあげなかったんですけど、この監督、物語を事前にイラストで「こうなります」って教えてくれるんですね。
まず最初に印象に残るイラストがバーンと出るんですが、それが物語の起承転結だったのだとか。
私は「ラブストーリー」を見るまでピンときませんでした。(いや、「ラブストーリー」は映画見ながら「あ?ラブストーリー!?これが!?は!?」って混乱しましたが! ※見た人は同調してくれるとおもうんですが、あの絵めっちゃ怖くないですか??? 陰毛切ったあとに股から血が出るイラスト、陰毛と共に股間切ったのかと思ったわ)
そんで、それ通りに物語が進むと、結構「あー」って謎の感動があるんですよ。怖いですね。
(考察サイトで)ヒロインが冒頭家族が死んでベットで泣いてるシーン。あそこ、熊と笑顔の花輪をつけた女の子の絵があるんですって。これも知った瞬間に「うおー!」ってなりました。
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◼️カメラワークについて
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美しいんですよね…。
ヒロインが彼氏に「誤解してごめん」と言ってるシーン、鏡越しなんですけれど、それがもうすごいとしか思えなかった。
低予算映画なのかな?と、思ったら次の瞬間360度で部屋の中を見渡すカメラワーク。
この「部屋全体を切り出すカメラワーク」冒頭ではとくに見受けられて、ドリフ大爆笑のように家を切断したような空間もあれば。
ヒロインがトイレに逃げ込む瞬間に、カメラが頭上にぐるっと回転して場所がかわる。
思い返せば、この転換の仕方。
大きな手のひらで上から彼女を捕まえているような表現なんですよね。
で、ひきづりこまれるように変態村に到着したわけですよ。
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◼️クマさん
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漫画ゴールデンカムイ でもありましたが、北国ってクマを神聖な生き物としがちなんですね。
序盤に檻に閉じ込められた熊を見ながら「ゴールデンカムイ じゃん!こんな大きなクマがいたらカムイの人たちに怒られるぞ!」とか言っていたんですが。
このクマが………最後…クマさん…。
(余談/一緒に見てくれた試聴済みの友人が「あのクマこんな冒頭からいたんだ!」と言っていたので、ゴールデンカムイを見てなければ初回見逃してしまうのかも。 ゴールデンカムイを読もう!)
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◼️麻薬について
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なんで村に入る前に麻薬めっちゃ吸ってんの??って謎だったんですけど、これ、ドラック映画だったんですね…。
(友人考察)要所要所でドラックの効能や接種された時のトリップ体験を冒頭のシーンと同じだと関連づけている(ドラック盛られたことが分かりやすいように表現した)のでは?
といわれたので「あーなるほど」と思いました。
※でも、それならアメリカでしてもよかったと思うので、もしかしたら他の意味があるかもしれませんね。
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◼️ルーン文字
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冒頭から起用されていたようですが「この作品ルーン文字じゃん!」って気付いたのが、老人が飛び降りする前の食事シーン。
椅子の形がᛟの箇所です。
そこから気付いたらあちこちにも。
この食事の直後に死ぬ老人二人の服にもなんかそれっぽい模様があったので、ルーン文字の辞書片手にまた見ると楽しいかもしれませんね!(しばらく見る気はないですが)
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◼️最悪のシーン
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「仲間割れ」「ドラッグ」「不味そうな食事(飲み物含む)」「常に不快な音が流れる」「酔うようなカメラワーク」など、常に嫌な感情を揺さぶられるんですが。
私はこの作品は三つの最悪があると思います
①老人飛び降り
②食事に異物混入
③最悪のセックスシーン
そんで、まず最初の
①老人飛び降り
なんですが、これ。死体がリアル…石に向かって綺麗に飛び降りた女性。まず、この女性が岩にたどりついてバウンドする。でも、肉は柔らかいから、石にべっとりとこびりつく。
そして、次は男性。女性とは明らかに飛び降り方が違って、違和感を感じながら見たら足が骨折し苦しんでいる。この男性がまた美しかったので、顔をハンマーにより潰され醜くなるのがまた壮絶で。最悪でした。
②食事に異物混入
あの「ラブストーリー」をなぞってるとわかる食事。人肉パイなど純粋に恐怖をあおるのもあるんですが、それ以上にこの表現は気持ちが悪かったです。
パイで「うわ!気持ちわる!」と思って、『ラブストーリー』を思い出して「まさか」と思ったら。
ドリンク…。
③最悪のセックスシーン
長くないか??
なぁ長くないか????
いや、最初は花に囲まれた美女の裸体が美しかったり、手に手をとってコーラスしている村の女たちが美しいので、まあ許容範囲なんですけれど。
長くないか???
「あれ?長い…?」ってなってるところで、おばあさんが彼氏の尻を掴み押し出しはじめて「ギャグか?」とも思い始めました。
そこら辺からコーラスもうるさく感じてきて、オブジェだった周囲の女性が彼氏にキスしてきてきたり煩わしさを感じるんですよね。
で、着床したであろうところで、身体になじませるために女が身体を小刻みに揺らす。
要所要所の箇所が癖にささる人がいるとは思うんですが、いやー。
長い!
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◼️洗脳について
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この話はヒロインがこの村に残ってくれるよう誘導している箇所がいくつかあります。
・老人飛び降りで錯乱したヒロインに画家が「俺もきみと同じ(親が火で死ん)だ」と言って問題をすり替える
・お客様のように扱っていた男たちと離し、村の女たちと一緒に料理を作る
・村の女たちと同じ白い服を着させて一緒に踊らせる
・わざと最悪セックス小屋の近くに馬車をとめて最悪セックスを目撃させる
もし、総合格闘技(ダンスパーティ)でヒロインが最後に残るのが(麻薬の力などで)仕組まれたものだとした場合。
ヒロインはこの村の一員(殺人を犯すことで現実から逃げだせない)(この村は家族としてヒロインが求めていたつながりを作った)になるよう全て仕組まれていたのかもしれません。
画家のせいによって。
監督も言ってたじゃないですか。
「ヒロインの見る世界だから、男達は嫌なやつに見える(ただし画家だけは優しかった)」
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◼️画家について
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以上の理由で、私は画家が怖いです。
・なぜ真面目くんの論文テーマが変態村なのか?
・なぜ男だけの旅に女が一人ついてきたのか?
・(考察サイトで)ヒロインに旅行のことがバレたのは画家のせいだった
・麻薬を最初に勧めたのは誰だ?
・画家が男たちに(ニューヨークにいた時から)麻薬を嗅がせて言うことをきかせていた可能性は?
・ヒロインの家族の死が他殺に見える(妹のチューブが無理矢理つっこまれている)
・75歳になったら死ぬというのを隠さず伝えている
あと友人が「画家の親は火で死んだって言ってたけど、あれって最後の儀式の犠牲者ってことかな?」
と言っていてゾッとしました。思えば、最初の方で赤ちゃん抱いた女性は「親はいないの」と言っていました。
ずっと泣き叫んでいた赤ちゃんの親は、変態村で生まれ巡教で行った人なのか。遊びに来た犠牲者の子供なのか。犠牲者の忘れ形見なのか。
ちなみに私は、
・画家はショタの時に変態村に来た
・親を目の前で殺された
・赤ちゃんのように泣き叫んでいた
・(洗脳によって)家族の一員になった
と思っています。
もしそうであればより最悪なので。
※祭りは90年に一度ですが、お焚き上げはしていた可能性
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◼️おしまい
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さて、私はこの映画を見て以来「ハンマーを見るとミッドサマーだと思う」という病に患いました。
それほど強烈で、手に汗握るほど夢中になって見てました。好きか嫌いかというと「好き…かな?」という有様で、気軽に友人に勧められるかと言うと「怖いもの見たさならよいのでは?」となります。
・生理的嫌悪感含む表現の巧みさ
・映像の美しさ
・美しい音楽からの不協和音
・トリップ体験
・考察の楽しさ
また、洋画ホラーにありがちな驚かすホラーでないのも面白いポイントだなぁと思いました。
忘れられない映画の一つとなりました。
しばらくは見れませんが。