「母性」マレフィセント2 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
母性
まさか、泣かされるとわ。
幻想的な世界観は美しい。
中世の鎧やお城など、王道の世界観を堪能できる。煩く思う感じもするが、引絵で魅せきる存在感のあるスケールには目を見張る。
はた、と思うのはこんなキャラだったっけなぁと。いや、こんなキャラだったのかもしれない。「悪い魔女」のイメージが強い。
だが、今作のマレフィセントはよく作り込まれてる。その「悪い魔女」のイメージを崩す事なく、いや死守しつつ、慈愛を演じてみせた。
ほぼほぼ彼女は表情を崩さない。
優しさの表情筋を持ち合わせていないかのようだ。なのだが、目が変わる。眼差しが変わるとても言うのだろうか…。
そんな微細な変化で魔女が故の母性を表現してみせた。見事だった。
元々、愛情は理解しているようで同族に対する情はある。彼女はその眷属達を守るが故に魔法を駆使して猛威をふるう。
これが人側からみた魔女の解釈なのだ。
そこを一切崩さず既知のマレフィセント像を裏切る事はなかった。
髪を下ろした時のギャップも凄まじい。
あの頬骨の効果にはそんな意図もあったのかと、目眩がする。
ただ美しいだけではなく脆く見える。
孤高であった存在が、実は脆く他者への愛を溢れる程、その内に秘めていたと容易に想像させてしまうのだ。
なんつうかマレフィセントの表と裏を存分に堪能したような感じだ。
戦闘表現も幻想的な色使いも申し分ない。
観終わった後には、差別意識をもつ人物の醜さが残る。王妃の落差といったら…あの女優さんは、ホントに達者だなあと思う。
物語の大団円には倒される悪は必ず必要で、彼女が際立つからこそのハッピーエンドである事は否定のしようがないのだ。
勿論、素直で可愛いオーロラの存在も絶大だ。彼女が微笑むと周りの温度が2度程上がったんじゃないかと思うほど、温かな気持ちになる。
正直、観るのを躊躇っていた本作だったが、予想に反して快作だった。
マレフィセントは徹頭徹尾、分かりやすい善を纏う事はなかった。
黒き翼を持ち、悪魔的な角をもち、異形の容姿で牙まで生えてる。緑の魔力を纏う姿などは悪魔そのものだ。
そこを崩さなかったからこそ伝わったものはあると思う。