劇場公開日 2020年1月24日

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「猫人間たちの悪夢」キャッツ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5猫人間たちの悪夢

2020年7月18日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

寝られる

本場は見た事無いが、タイトルもどんな作品かも知っている。
1981年の初演の英ロンドン以降、米ブロードウェイや日本でも公演。
舞台ミュージカルの金字塔。
遂に映画化。
監督は『英国王のスピーチ』でオスカーを受賞し、『レ・ミゼラブル』も手掛けたトム・フーパー。
キャストに現役バレエ・ダンサーやシンガー、実力派やオスカー名優らのアンサンブル。
名曲とダンスに彩られ、豪華絢爛。
世界中で大ヒットし、この数奇な猫たちがオスカーの舞台にも立つ!
…筈だった。
誰だ、完成作も見ないでそんな事を言った奴は!?

おそらく世界中の人々が同じだろう。初解禁された予告編を見た時の衝撃。
自分はずっと前、映画ニュースなんかで耳にしていた気がする。役者が猫に扮する。
でも、舞台と同じだから気にしていなかった。が、予告編を見た時の衝撃…!

恐怖!猫人間!
作品はミュージカルじゃないのか…?
これじゃあホラー…。
しかも作品を実際に見ると、その不気味はさらに。
猫人間たちがクネクネクネクネ異様な動き。それで壁を伝わり、空をジャンプする。猫ってこんな動きする…?
もうとにかくその姿が気持ち悪すぎる。映画は最初違和感あっても次第に見慣れてくる事よくあるが、本作は全くだった。終始受け付けなかった。
耳や尻尾がCGで動く。毛並みもCGで再現。それらと人間がリアルに組み合わさったのだから…。
さらにさらに、ネズミ人間やゴキブリ人間まで登場…! ゴミ捨て場を漁る悪趣味シーンも。
よくこれ、企画が通ったなぁ…と思う。

ミュージカルの最大の醍醐味はダンスや歌曲。
猫人間のクネクネした動きはアレだが、ダンス自体は躍動感ある。
歌や曲については文句ない。こればかりは当然だろう。
聞いた事ある名メンバーも。迫力あったり、たっぷり感情込めて、高らかに歌い上げられている。
良かったのはこれだけで…。

猫人間のビジュアルも問題だが、話の弱さも難。
舞台では例え猫のメイクやコスプレしていても、目の前で躍動するダンスや歌曲に魅せられる。
が、映画ではそれプラス、話に引き込まれるものが無いと弱い。同監督の『レ・ミゼラブル』は歌曲の迫力に加え、話に非常に引き込まれた。近年ヒットしたミュージカルもほとんど同じく。
一応本作も主軸となる話はあるが、他のミュージカルと比べて退屈。
何か、ただ歌って踊ってるだけの猫人間のPVのような気がした。

主役猫人間を演じた英国ロイヤル・バレエ団の現役ダンサー、フランチェスカ・ヘイワードは本来はとても美しく魅了される人物なのだろう。(実際画像を見てみたら、その通り!)
ジェニファー・ハドソンやテイラー・スイフトも然り。
全くその魅力が活かされていない。いや、それ所か、猫人間のビジュアルに殺されていると言っていいだろう。
イドリス・エルバ、イアン・マッケラン、ジュディ・デンチに至っては、何で出たんだ?

名作舞台ミュージカルを同監督で映画化し、『レ・ミゼラブル』の夢よもう一度!
監督や映画会社の下心見え見えの思惑はゴミ捨て場に堕ちた。
こんな事言ったら元も子も無いが、映画化すべきではなかった。
『キャッツ』という名作の黒歴史になってしまった。

改めて言おう。悪夢!猫人間!
その悪夢とは、猫人間のビジュアルだけではなく、
見た人や関わった人全員の悪夢に…。

近大