「これ程の珍品にはなかなかお目に掛かれない!」キャッツ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
これ程の珍品にはなかなかお目に掛かれない!
長老に選ばれ「天上の世界」へ行くため、個性豊かな猫たちが渾身のパフォーマンスを披露する、奇抜なヴィジュアルが話題を呼んだファンタジー・ミュージカル。
監督/脚本/製作は『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』の、オスカー監督トム・フーパー。
太っちょな紳士猫バストファー・ジョーンズを演じるのは『はじまりのうた』『オーシャンズ8』の、名優ジェームズ・コーデン,OBE。
天界行きを狙うお尋ね者の猫マキャヴィティを演じるのは、「MCU」シリーズや『ズートピア 』の、名優イドリス・エルバ。
年老いた劇場猫ガスを演じるのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『美女と野獣』の、レジェンド俳優サー・イアン・マッケラン,CH CBE。
おばさん猫のジェニエニドッツを演じるのは『ピッチ・パーフェクト』シリーズや『ジョジョ・ラビット』のレベル・ウィルソン。
猫たちの長老、オールド・デュトロノミーを演じるのは、『007』シリーズや『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』の、レジェンド女優デイム・ジュディ・デンチ,CH DBE FRSA。
製作総指揮は『インディ・ジョーンズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』シリーズの、伝説の巨匠スティーヴン・スピルバーグ,KBE。
第40回 ゴールデンラズベリー賞において、最低作品賞、最低脚本賞、最低スクリーンコンボ賞などを受賞🌀💩💀
1981年にロンドンで初上演されて以来、世界中で公演され続けている同名ミュージカル作品を実写映画化。
世間では中々の酷評を受けているこの映画。
まず申し上げておきたいのですが、この映画は悪いところばかりではありません。素晴らしいポイントも多々あります。
まず、舞台となるロンドンの街並み。良い意味で偽物っぽいセット・デザインは巨大で迫力がある。お洒落で可愛らしいデザインが、ファンタジックな映画の世界観にマッチしていて非常に良かった。
ミュージカルを披露する俳優陣はみなさん本当に素晴らしい✨
主演のフランチェスカ・ヘイワードが舞う優雅なバレエダンスの美しさは本当にすごいし、落ちぶれたかつてのスター猫グリザベラを演じたジェニファー・ハドソンの歌唱力も圧巻。「キャッツ」の代名詞ともいえる名曲「メモリー」の素晴らしさと相まって、彼女の歌唱シーンはとんでもない名シーンに仕上がっています。
その他にも素晴らしい役者が揃っていますが、特に素晴らしいと感じたのは年老いた役者猫ガスを演じたイアン・マッケラン。
老いた猫の孤独感を息遣いや表情で完璧に演じきり、ミュージカルシーンでは老いすらも武器にする熟練の技を魅せてくれます。本当に素晴らしい役者!
彼の渾身の演技が見られるだけでもこの映画を観る価値はあると言えると思います!
このように良いところもあるのですが、映画として看過し難い問題点があるのも事実…。
私はミュージカルに疎く、舞台版の「キャッツ」を観たことがないので舞台↔︎映画の比較はできないのですが、全体の雰囲気や演出を見るに、かなり舞台版を意識して作られているのではないでしょうか。
この映画、正直シナリオの脚色に問題がある。
舞台では良かったのかも知れないが、映画的なシナリオへの改変が出来ていない為、何が何やら訳がわからなくなっている。
まず目に入ってくるのはキャラクターの強烈なヴィジュアル・インパクト。
人間が毛皮のついた全身タイツを着込んでいるかのような奇天烈なデザインは、やはり映画の世界に入り込むのには邪魔です。
映画が進むに従ってまぁ慣れてはいくのですが最初はやはり面食らう。
強烈なキャラクターヴィジュアルに脳が拒否反応を起こしているにも拘らず、「ジェリクルキャッツ」だの「ジェリクルホール」だの、「猫には3つ名前が必要だ」だのと独特のようわからん世界観の説明をされるので全然頭に入ってこない。
猫の名前の件は結局伏線でもなんでもないし…。そこ必要ある?
映画開始から怒涛のようなミュージカルシーン。
一曲一曲は楽しいが、どうでもいいキャラクターの紹介までもミュージカルなので、とにかく物語が進まない。
ディズニー・アニメーションのようにここぞという場面でミュージカルが挿入されるわけではなく、オープニングからエンディングまでずーーーっとミュージカルシーンの連続なので、流石に飽きます。
映画として成立させるためには、どうでも良いキャラクターのミュージカルではなく、グリザベラの掘り下げこそが必要でしょう。
ヴィクトリアの助けもあり、最終的に彼女が天上へと導かれますが、彼女の掘り下げが不足しているため、なんかよく知らない脇役が優勝したわ…という感情しか湧いてこない。
ヴィクトリアと彼女の交流や、彼女の持っている過去に対しての後悔の念などを丁寧に描写するだけで、この映画の出来は随分と変わったと思いますよ。
悪役のマキャヴィティは魅力的ですが、船での件は茶番の一言。一応ここは見せ場なのだと思うのですが、緊張感が全くないため映画に起伏が出ない。
拐われた長老を助け出すためのシーンなんて噴飯物ですよっ!あんな電波な脚本なかなかお目に掛かれない!
そもそも天上界ってなんなのかよくわからないし、クライマックスでの第四の壁を破壊して観客に対して歌われるねこねこソングの訳わからなさ。あんなシーンいるか?
ミュージカルシーンの一曲一曲を楽しもうという人には良いのかもしれませんが、映画全体の脚本は酷いものです。
物語を楽しもうと思うと全くノれないので、役者の素晴らしいパフォーマンスを楽しもうという考え方に脳を変換して映画を観なければいけません。
問題ばかりの作品とはいえ、奇妙奇天烈なヴィジュアルとこれでもかと言わんばかりのミュージカルシーンの大盛り具合は凄まじい。
なかなかお目に掛かれない珍品であることは間違いないので、映画館に足を運ぶ価値はあると思います!
こんにちは。フォローして頂いてありがとうございます。
ある意味、私はここまで理解して観ていたかどうか分からずにいたかもしれません。
キャッツをここまで理解してもらえたことは嬉しいです。