「アルプススタンド全体の空気。”映画のはし”にも魅力がある。」アルプススタンドのはしの方 kizkizさんの映画レビュー(感想・評価)
アルプススタンド全体の空気。”映画のはし”にも魅力がある。
一度もマウンドを見せることなく、高校野球の1試合を描くのがスゴい!
スタンド席しか映らないのに物語が成り立つなんて……演劇って面白いなー。
映画的な演出としても、席の位置だったり日の照り方だったり……環境がさりげなく変わっていくなど巧い撮り方がいくつか。ちゃんと映画としての魅力が加わってました。
自然とクライマックスへと向かっていく。自分の気持ちも高校生たちと一緒に盛り上がってる心のザワザワ!
はしに座っている4人が主要キャラではあるのだけれど、のめり込んでる終盤では一切セリフのない高校生たち全員と一緒に盛り上がってる感覚がありました。アルプススタンドの空気が素晴らしい。
4人だけが変わるんじゃなくグループ全体が変わる一体感。
みんなでウワー!って一喜一憂するゾーン。
なんだこのエモさは!
藤野が良い演技と空気。まったく嫌味がない存在感。顔立ちも絶妙だなー。
あすはの雰囲気も素敵。超絶美人ってわけではないけど親しみやすくて魅力的。あー、こういう女子いたなーとか。
この二人のみになるシーンとかすごく好き。
逆にひかるの演技がどうしても好きになれず。セリフが”セリフ”になってて台本あるなぁって感じてしまいました。
明るい子なのに○○でちょっと変になってるって状態だと思うのだけど、ずっと喋り方が違和感あってもともと変な子に見えてしまった。
静かな少女・宮下もキャラ色が強すぎて……うーん。
あすはと藤野の自然なトークが見事だからこそ、この2人に違和感を強く感じてしまった。
物語は”アルプススタンドだけでどうやって展開していくの?”って面白さがある。
それぞれの関係性や状態を丁寧に解きほぐしていく。
そして様々な伏線を終盤に回収していく。
その回収具合に無駄がなさすぎて”え、それまで触れるの?”とトゥーマッチに感じてしまった部分も。そこまで全部をケアしなくても……と。
料理で例えるなら、海老一匹をまるごと無駄なく頭も調理して出されたみたいな。その頭は口に刺さって痛いんですけどー、みたいな。
と気になる部分もいくつかあったんだけど、最後はアルプススタンド全体の空気に胸が高まりまくった!
焦点をあてて描かれた部分だけじゃない。”映画のはし”にも魅力がある。
音楽に鼓舞される気持ちよさ!
エンドクレジットで流れるthe peggiesはクリーンヒット!このバンドにこんなにも青さを感じるとはー。見事なタイミングに見事な選曲が炸裂してました
帰り道、いままでハマりきれてなかった”いい子になったWANIMA”をWALKMANで聴きながら純粋に高まってる自分がいました。良さを感じることができた。そんな映画でした。