「しょうがない、なんてことが、あるか!!!」アルプススタンドのはしの方 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
しょうがない、なんてことが、あるか!!!
どうやらこの現場は甲子園らしい。どうみても甲子園ではない。なのになんで甲子園だと設定するのか。県大会とかに場面を替えればよかったんじゃないのか?・・そんなケチをつけながら見ていたが、いつの間にかそんなささいなことを忘れさせるほど、熱かった。(そもそも、野外設営の舞台だと思えば、なんてことはないんだから)。
結局、甲子園じゃないじゃないかって批難するのは、まるで当初やる気のない「はしっこ」で応援している彼らと同じなのだ。誰かのせいにして、自分はミスった、損をしたって言い訳しながらそこに座っていた彼らの態度と。
しかしまあ、いいなあ、誰かのために応援するって。目の前にいるのは自分じゃないのに、まるで上手くいくこと(この場合試合に勝つこと)が自分の成したい成功であるかのように、自分の願いを仮託して大声でガンバレって叫ぶ。それも、さっきまで諦めばかり言ってた若者たちが。
あんなに白けてた安田だって、送りバントの役割を理解したからこそ、自分たちも県大会にでようと決めたのだ。来年全国大会に出られなくたってそれが後輩への送りバントだって思えたからだ。
厚木先生のキャラもまたいい。見る人はちゃんと見ているんだって励みになる。
僕は知らないが、「中屋敷法仁が『贋作マクベス』をつくったのは、高校三年のとき」っていう話は演劇界隈では有名なのだろう。それを届かない高みではなく、自分にだって登れる山だとチャレンジする心意気がいい。その結果は、試合の結末と同じかもしれないが、そこを目指すことが肝心なのだ。だってさ、結局プロになったのは誰よ?思ってもみてなかったでしょ。その事実が、この映画の中で、目指すものを持っている者の尊さを輝かしくみせてくれているんだもの。それこそがこの映画からのメッセージだ。