劇場公開日 2019年11月1日

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「家族は他人よりも分かり合えない存在なのかもしれない」最初の晩餐 マエダさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0家族は他人よりも分かり合えない存在なのかもしれない

2020年2月4日
iPhoneアプリから投稿

親父の葬式の晩餐で最初に出てくる「チーズ目玉焼き」。
親父がハムと間違えて偶然出来上がった、創作料理。
それを見て息子は、忘れかけていた「家族」の残像を思い出す。
更に一品、一品、それぞれの思い出と結びついた.世間から見ればあまり立派とは言えない、オリジナル料理が姿をみせるごとに、かつての家族の姿が我々の目の前にまざまざと姿を表す。

思えば家族の繋がりとは食卓でのイザコザであり、思い出とは拙い創作料理のようなものかもしれない。
そしてそれ以上を家族に求めてはいけないし、その程度で十分なのだ。

本作は、一家庭の創作料理のような、丁寧に愛を持って作られた作品である。
作らなければならない理由があって作られた、芯のある作品である。
近年は冷凍食品やコンビニ食品、食べ応えのあるチェーン店の外食、のような映画が映画業界にも溢れているように思う。資本主義がどの業界にも蔓延、跋扈しすぎた。
本作を地味だとか暗いだとこでしか評価できないとしたら、それは本質をどこかに忘れてきてしまった味覚障害の人間の所業のように思う。
僕にとっては、忘れかけていた何かを思い出させてくれる、田舎の実家のような温かくて日本らしくて居心地のいいような悪いような、そんな作品であった。

冥土幽太楼