「亡くした息子への妄執に囚われた母親が造り出したというのが新味のフランケンシュタインのユダヤ教バージョン。ユダヤ人迫害の歴史のリアリティに裏打ちされているので奥深いモンスター物となっている。」ザ・ゴーレム もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
亡くした息子への妄執に囚われた母親が造り出したというのが新味のフランケンシュタインのユダヤ教バージョン。ユダヤ人迫害の歴史のリアリティに裏打ちされているので奥深いモンスター物となっている。
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①ゴーレムというとユダヤ教版「大魔神」という漠然としたイメージがあったが本来はどうやらそうではないらしい。②ホラー映画という括りにされているが、それほど怖くない。それより、息子の事故死した理由(何故神は息子を御元に呼ばねばならなかったのか)を知りたくて夫にユダヤ教の聖典や禁断の書をこっそり持ってきてもらって(男性しか近付けなかったというジェンダー問題がここにも)読んでいるうちに、ゴーレムという土から人を造るという秘術を知り息子を生き返らせるという妄執に囚われていき実現させてしまうという展開が面白い。(ある意味母物。)③中世の東欧(リトアニア)のユダヤ人コミュニティの描写、中世の疫病(ペスト)パンデミックの様とそれをユダヤ人のせいと考え差別し迫害する歴史的背景がキチンと描かれているので、チープなモンスター物に堕していない。④リブ・ウルマンにどこか似ているハニー・フルステンベが、暴走する母性愛だけでなく、夫に色目を使う女に憎しみを抱いてしまう女臭い部分も持ち合わせるハンナをオーバーアクトにならずに好演。最後の口づけで自分が造り出した息子の代わりのゴーレムの口から巻物を取り出し落とし前をつけるシーンが哀切。⑤ラストの村の焼き討ちと虐殺シーンとはユダヤ人迫害の歴史の映像を見せられているよう。
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