劇場公開日 2019年10月25日

「ワケありの死者達がベラベラ喋る、因果応報がパンパンに詰まったブラジリアンホラー」死体語り よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ワケありの死者達がベラベラ喋る、因果応報がパンパンに詰まったブラジリアンホラー

2020年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

サンパウロ市の遺体安置所に勤める監察医助手のステニオは死者と話すことができるという特殊能力を持っていた。次から次へと運び込まれるのはワケありの連中ばかり、彼らから最後の言葉を聞いてささやかな親切を施す毎日。ある日運び込まれた遺体から妻オデッチが近所のパン屋の主人ジャイミと不倫をしていることを知らされたステニオは怒りを募らせ、越えてはならない一線を越えてしまう。

原題を直訳すると”死体は語らず”。真逆の邦題を付けるっていうのは『ゼロ・グラビティ』以来じゃないでしょうか。しかし本作では邦題の方が正解、運び込まれるのは当然全員ブラジル人なので全員がまあよく喋ります。頭が割れていたり手足が千切れてたりするのに普通にペラペラ話すので正直ちっとも怖くないですし、正直これをホラーと呼んでいいのかどうかも疑わしいです。それでも本作が面白いのが主人公のステニオとお亡くなりになった人々がほぼ全員クズだということ。因果応報のミルフィーユを腹一杯食わされる感には岩塩多めのラテンフレイバーがパンパンに詰まっています。

メジャーな大作にはよく出てくるリオに対して、サンパウロは画面映えするランドマークがないからかいつもガン無視を食らっているわけですが、『ストリート・オーケストラ』や『狼チャイルド」がそうだったように、エゲツない人間ドラマの舞台には最適。最低の人間が散々な目に遭う様を目の当たりにしながら、死人と会話出来ない己の無能さに安堵を覚えます。全然万人受けしない作品ですが、これぞブラジルっていうあるあるはきっちり捉えているちゃんとした映画でした。あとこれに気づいている日本人はほとんどいないと思いますが、ノンクレジットで『ストリート・オーケストラ』の主演だったラザロ・ハモスが一瞬だけ出てきます。

よね