権利への階段のレビュー・感想・評価
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マクガイア・シスターズは知らなかったけど、マクガイア・ブラザーズなら知ってる
1985年のカリフォルニア。エレノア・リース(ヘレナ・ボナム・カーター)は精神病院で強制的に薬を飲まされ、副作用に悩まされ続ける。もっとも大きな障害は膀胱疾患だった。フラフラ歩く彼女は公衆電話で「患者の権利を守る会」に助けを求め、元看護師でもある弁護士コレット・ヒューズがやってくる。
精神病患者以外には認められる医師による「説明と同意」は、エレノアのような統合失調症患者には認められなかった時代。副作用についても知り、自分でよくならないとわかっていても薬を拒否できないという趣旨のものだった。まずは退院請求をして、病院を訴えることにしたコレット。法学部教授モートに教えを請い、恋人ロバートが医師であるため強いサポートともなり、信頼されていた。
一審を戦う際、二人で法廷へと向かうとき、「55段ね」と言ったエレノア。階段を下りることがつらい彼女にとって段数を覚えるのが日課ともなっていた。そんな原告側の強い資料ともなる彼女の日記、薬と効果・副作用についてこと細かく記録されていたのだ。しかし、一審は敗訴。さらに様々な医師の協力のもとで争う覚悟を決めた・・・
公判のシーンはそれほど多くないが、弁護士の論戦をロールプレイするところは面白いし、時にはぶつかるも、エレノアとコレットの友情が育まれていく過程も素晴らしい。ロバートとの仲も心配になるほどのエピソードもあるし、エレノアと親しいシスターの様子もいい。女性弁護士の信念と、患者15万人の代表ともなる大義。報酬はほとんどない。さらに、エレノアが看護師であるかのようにコレットを気遣うところは涙が出てくるほどでした。
インフォームド・コンセントの歴史は患者の自由意思という権利から生まれたもので、紆余曲折はあるけど、精神科医療では後れをとっていた。今でこそ患者に薬の説明は普通に行われているけど、こうした裁判によって歴史は変わるものなんだと改めて納得しました。
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