「【女性指揮者を目指し、数々の困難を乗り越え、夢を叶えたオランダ女性の気骨。何事にも諦めない勇気を貰えます。】」レディ・マエストロ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【女性指揮者を目指し、数々の困難を乗り越え、夢を叶えたオランダ女性の気骨。何事にも諦めない勇気を貰えます。】
クラシック音楽をこよなく愛するウィリー(本当の名前はアントニア・ブリコ)は、かなり向こう見ずで気が強い。オーケストラのホール係として働くが、尊敬する指揮者を観たいがために椅子を最前列の真ん中に持ち込む場面などが印象的である。(且つ、このシーンは効果的に再現される)
が、その気質が指揮者には求められるのだと、数々の困難を乗り越える彼女の姿を見て気づく。
印象的な場面は数々あれど、
・実の父母と思っていた二人が実は養父母だった事が分かった場面(養母の彼女に対する態度の理由が判明)
・本当はオランダ生まれで本名はアントニア・ブリコだと分かり、養父母との決別の後、本名を正式に名乗る場面。
・ピアノ教師のセクハラに毅然と対応するシーン(あの対応は全く正しいが、彼女の気性も物語る。)
・オーケストラホールも経営している(そして、上記の一件で彼女を馘にした)上流階級のフランクと恋に落ちる場面。だが、彼女はフランクの望む妻の座より指揮者になるという困難な道を選ぶ。苦悩する二人。
・アントニアが粘ってドイツの指揮者の指導を受けるようになる場面
・偏見と闘いながら、女性指揮者として脚光を浴びていく場面
<とりわけ印象深いシーンは>
・ブリコを陰に日向に支援していたロビンの本当の姿が明らかになった時(雪合戦で怪我してコルセットって・・と思っていたら、納得。)
今作で、最も印象的且つ涙が滲んだシーンである。
・かつてのセクハラピアノ教師とラジオ番組で対峙した際、貴方がいたから今の私があると述べる場面
(ブリコの度量と薄っぺらい男との対比)
・フランクの家を久しぶりに訪ね、彼の陰ながらの支援に感謝するブリコに対しフランクが口にした言葉”ジェントルマンであるから”と彼の子供の名がウィルだった事。
・自らタクトを振るコンサートに養父母を招く場面と、フランクが且つてブリコが行った方法でオーケストラの演奏を聴く場面・・
<世間の様々な偏見や壁:ジェンダー、生れと育ち、身分・・・に対し、決然と対峙し、乗り越えていった稀有な女性の物語。何事にも諦めない勇気を貰えます。>
<2019年11月9日 劇場にて鑑賞>