「素晴らしかったです」ウエスト・サイド・ストーリー 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしかったです
オリジナルは未見です。物語にも興味がなくアンセル・エルゴートが見たかっただけなのですが、素晴らしい映画でした。音楽、歌、映像、ダンス最高。ただそれは当然かなという気持ちがあります(スピルバーグだし、お金かけてるし)。それよりも争いの無意味さと虚しさが丁寧に描写されていていいなと思います。
二つのギャングのシマは開発予定で、すでに立ち退きや取り壊しが始まっています。こんな場所を取り合ったって意味はありません。なのに男たちは無理やり勝敗をつけようとします。確かに対立するグループを集めたパーティーの企画者も無神経ですよ。ですが女たちは「今、このとき、愛する人との楽しい時間」を望んでいるのです。しかも生バンドですよ?トイレにこもって殺し合いの話をしてる場合じゃないよ。この映画に出てくる男たちはそろいもそろって野暮天です。
シャークスは暖色系、ジェッツは寒色系の衣装なのですが、それが無かったら群舞の時なんかは見分けがつかないですね。もちろん顔立ちを見ればわかりますけど…。遠くから見るとダンスが好きな同じ人間にしか見えません。それで消えゆく街の支配権を争うのが非常に空しく感じました。「貧困とか機能不全家族のせいで不良になっちゃいました!それって僕たちのせいですか?」という感じの歌のシーンがありましたが、抗争することでしか鬱屈から抜け出せないのでしょうか。華やかな画面の割にいろいろ考えさせられました。
トニー(アンセル・エルゴート)は最高にかっこよかったです。特に「マリア」のシーンが好きです。
60年前の「ウエストサイド物語」は悲劇的な話なら見たくないな~と思って敬遠していたのですが、これを機に見てみたいと思います。