「スピルバーグ監督だからこその名作リメイク」ウエスト・サイド・ストーリー 佐和子さんの映画レビュー(感想・評価)
スピルバーグ監督だからこその名作リメイク
まずこの作品、ラストは大元がロミジュリなので知らない人いない前提で書いてもやはりネタバレになるのかな?
私はミュージカルをずっとやってきたこともあり当然1961年版は何回も見ている。
東宝シネマズ渋谷でポイント鑑賞。土地柄若者多し。
言わずと知れたミュージカルの金字塔をリメイクしかもスピルバーグはミュージカルを撮ったことがないとな!楽曲やダンスのパワーはそのままに、より現代に生きる私たちへのメッセージが込められた素晴らしいミュージカル映画!
いや、もう…オープニングから大興奮!まとめきれないけど1961年の映画と比べると
・ベルナルドがなぜかボクシング選手の設定
・マリアがかなり積極的 職業はアニタの店のお針子ではなく夜勤の清掃(これはI feel prettyの歌われる時間帯と整合性が取れててとても良い。
・曲順を舞台版と映画版が違うのは割と知られているけどこのリメイク版はわりと舞台版に忠実
・振付は権利問題で大きくは変えてないけどいわゆるバレエをベースにしたシアターダンスから少し重心低めで現代的なダンスになってる てなところかな…
もう体育館のダンスの迫力、そして二人の出会いのシーンの美しさで既に涙…
言わずと知れた名ナンバー「アメリカ」は屋外でのダンスシーンになっており子供たちも集まって踊る新たな演出もお見事!ただ、若い人でオリジナルを知らない人はダンスシーンは若干饒舌に感じたかな?
エニィバディは元々ジェッツに入りたい女の子の設定でしたがこれも現代ならではのキャスティングにはなってました。
一番度肝を抜かれたのはこの作品のテーマともなってる美しい「サムウェア」を誰が歌うのかという所。ドクの店の主が女性のプエルトリコ人と言う設定でリタモレノが演じるバレンティーノという女性が歌っててびっくり!
スピルバーグのアクションをたくさん撮ってきた経験が乱闘のシーンの迫力という意味ではすごく生かされて、かつ「リンカーン」のような政治メッセージの強い作品も撮ったことで、このウエストサイドストーリーが現代の人々にも響く作品になったと思います。
ジェッツとシャークスの対立が言うまでもなく主軸になってるけど、実はジェッツを抜けたトニーとそのメンバー、マリアとアニタ、ベルナルドでの意見の食い違いなど仲間や家族間での対立が色々な問題を引き起こしてるんだなと改めて気付かされます。この時代より今の分断の方が深刻だと監督は話していて、普遍的どころか近しい人との分断を意識することここ二年間感じてる人は多いのではないでしょうか。
いつか平和で美しい世界がきっとくる…サムウェアに込められたこのメッセージが渋谷の映画館で見てた沢山の若者たちにも届いたはずです。ラストにマリアトニーの亡骸を抱えて歌うのはトゥナイトだというのも良かったと思います。
2時間半という長丁場でしたが、エンドロールで席を立つ人が本当に少なかったのは、ラストが予告編からは想像できない悲しいものだったこともあるけど、きっと一人一人が分断は悲しみと犠牲しか産まないということを深く心に刻んだからだと思うのです。