劇場公開日 2022年2月11日

「今だから、リメイクされる意義がある」ウエスト・サイド・ストーリー さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今だから、リメイクされる意義がある

2022年2月14日
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鑑賞方法:映画館

ニューヨーク版ロミオとジュリエットとは聞いてはいましたが、ほぼまんまじゃん!(笑)

61年に公開され、翌年のアカデミー賞を獲得した名作ミュージカル映画のリメイク。
スティーヴン・スピルバーグがミュージカルを撮ったというのも新鮮ですが、ロッテントマトでもかなり評価が高いのでかなりな期待値をもって観賞しました。

期待以上とまではいきませんが、結構面白かったです!

基本的にミュージカル映画の魅力というのは素晴らしい歌とパフォーマンスだと思っています。
これがあれば、ストーリーが普通でも大概はカバーされます。

まず、主人公の仲間やプエルトリコ人達の社交ダンスのシーン。
ジャズのビッグバンドをバックに、そんなに広くないホールで大人数がぶつからずに男女ペアで社交ダンスを踊る場面は「これぞエンターテイメントだ!」と声に出したくなるほど圧巻でした!

スピルバーグは娯楽映画の名手だけあって、エンターテイメントとしてのミュージカルの魅力を充分理解している方と解って嬉しかったです。

また、主演の二人の歌唱シーン。
トニーを演じたアンセル・エルゴートは今回初めて歌う場面を観ましたが、あんなにミュージカルに合う歌声を響かせる事が出来るとは思わなかったです。
マリアを演じたレイチェル・ゼグラーの歌唱力も凄く、ハイトーンの響きが心に沁みました!

今作の舞台はニューヨークで、ヒロイン含めた親戚や兄の仲間はプエルトリコの移民という設定でした。
リメイク前の原作映画は、プエルトリコ人の俳優を起用出来なかったそうですが、今回スピルバーグがプエルトリコ人の俳優に拘ったそうなので、そこに関してはリアル重視でした。

ストーリーに関しては、移民における人種差別を描いていました。
40年前の映画でも描いていたはずの問題が未だにアメリカにある事にある種悲しさを感じますが、だからこそスピルバーグは未だ続いてる今のアメリカの情勢を感じて今回リメイクに踏みきったのだと思います。
そういう意味では、リメイクする意図が大いに感じられました。

人種間の対立や男女における価値観の違いや偏見をテーマに盛り込んでいるので、コミカルな場面やロマンチックな場面はありつつ描写は重いです。
ただ、人間のどうしようも無さや刹那的な衝動等を描いているので、多くの登場人物に共感が生まれます。

ただ、肝心な主人公とヒロインの恋愛描写に関しては正直弱かった気がします。
ディズニー映画もそうですが、傑作の恋愛映画は、基本的に男女が出会って良い感じになり結ばれるまで少し時間をかけることが多いです。
ただ、今作に関してはトニーとマリアが出会ってそうそう良い感じになってキスしてしまうので異様に早いです!
いやいや、「寝ても覚めても」じゃないんだから!(笑)

それから、説明的な台詞も多いです。
今作に関しては世界観を理解するためにある程度必要だとは思いますが、当時の街の様子は冒頭に文字で説明するなどの工夫はしても良かったんじゃないか?と思いました。

いろいろ気になった部分はあるものの、ミュージカル映画として、エンターテイメントとして、面白いものとなっていました!

(余談)
日本の映画製作者の皆さん、ミュージカル映画を作りたいのならこのウエスト・サイド・ストーリーを観て勉強してください!

さうすぽー。