「素晴らしい出来だが、」ウエスト・サイド・ストーリー mamiさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい出来だが、
名曲の数々で彩られた楽曲やダンス素晴らしさはもちろん、それを現代らしいアングルや美しい映像で観せている、よく出来た作品だと思う。しかし絶賛のレビューが多い中、敢えて書いておきたいと思う。
終盤まで楽しんで観ていたが、アニータのレイプ未遂シーンでガタガタに。
原作にも舞台版にも元の映画にもあることは知っているが、敢えて2020年代にリメイクするに当たって、このシーン要ります?
この物語でいちばん悲運のヒロインなのはアニータだ。恋人を殺され、それでも意を決してトニーとマリアのために危険と承知でヴァレンティーナの店に行った。彼女は何一つ悪くないのに、「女である」というだけでこんな目に遭う。
ひとつ、過去と違っているのはヴァレンティーナが心底蔑んだ目でそれを非難するシーンが加えられたこと。ヴァレンティーナを演じているのは前作でアニータを演じていた方なので『アニータが時代を超えてアニータ=自分自身を救った』と思えば少しは胸がすくかも知れないが、そのためだけにレイプが必要とも思えない。
このシーンまではこの若者たちを「やんちゃもするが劣悪貧困な環境の中助け合ってきた幼馴染たち」と見ていたが、一瞬でそのあとはもう気持ち悪いケダモノにしか見えなくなってしまった。レイプシーンもしつこくリアルで、息苦しくなったので、「ラストナイトインソーホー」同様、警告があるべき。男性には「暴力のひとつ」に思えているかも知れないが、深刻な地雷である女性は多い。「すてきな悲恋の名作ミュージカル映画」という触れ込みだけではこんなシーンがあるとはわからないし、「すてきな悲恋の名作ミュージカル映画」にレイプ未遂のシーンが必要か。毎回こういうシーンが含まれる作品に思うのは「ほんっとにそのシーン要ります?」だ。ほとんどは無くて問題ない。今回も、男たちがアニータを取り囲んで脅したりからかったりする…で十分だったはず。残念だ。
そしてアンセルのあの「事件」についてはどうなった?ベイビードライバー大好きだっただけに、はっきりさせて欲しかった。スピルバーグも、かばうならかばうでもいいから、触れるべきだったと思う。映画ファンは忘れてないんよ。