「映画ならでは、をして欲しい(一部ネタバレあり)」ウエスト・サイド・ストーリー S.i.v.aさんの映画レビュー(感想・評価)
映画ならでは、をして欲しい(一部ネタバレあり)
ウェストサイドストーリー自体は劇でも映画でも見たことがない。完全初見です。
朧気にラインダンスが強く出るという勝手なイメージで見に来ました。
結果から言うと、消化不良に終わった映画でした。
ミュージカルとしてのストーリーは今としては王道、昔としてはかなりのクオリティだったことは想像にかたくありません。
ただ、今は2022年、映画の作法等は目まぐるしい進化を魅せるアメリカ映画としては些か地味すぎるように思えます。
まず、冒頭から終盤近くまでずっと気になってたのがカメラワークです。
これはあくまで映画のリメイクだからなのか、それとも舞台を参考に作っているからなのか、基本横の構図が強すぎるんです。
ここ最近の映画って、SFXが進化して合成もキレイにできるので、人も3Dなんてのも珍しくありません。ワイスピの亡くなられた俳優さんの1シーンだけ完全3Dなんてのもあるくらいですし。
じゃあそれの恩恵として、もっとダイナミックに、もっと斬新なカメラワークがあったっていいと思うんですが。
今作は何と言うか、ある程度舞台にセットがあれば全く同じことができる所作や演技が非常に多いです。
舞台って、全く同じものでもなくても「見立ててそれっぽく扱う」事で成立するコンテンツです。
それはつまり、裁判官の黒い服に見立てるためにスーツのジャケットを前後逆に着たり、適当にあったはしごの左右を二人が持ち上げて真ん中の人がはしごの段を両手で掴めばオリの囚人のような演技も出来てしまうわけです。
上記の表現は実際にミュージカル中に見られる映画の中で演技で、かつその演技はかなりの割合で俯瞰で映すことが多いです。
俯瞰で映している間に行われている演技は何と言うか、妙にきれいなんですよね。
警察の警部(かな?)が冒頭でギャング二組を嗜めるシーンでも、妙に2グループキレイに分かれていますし、残ったポーランド系のグループも、何故か警部に道を譲るかのように2つに分かれて、その真ん中を警部が行き来する。
いやまあ、芝居ならこういう見立はいくらでもあるけれど、君達日常警察にも色々反抗してるギャングなのにそんなことある?と思うわけです。
私は以前に齧りですがお芝居に関わっていたことがあり、そのせいか劇中のカメラワークや演技の内容がそれぞれ「いやこれ舞台でもできるやつやん!!」って毎会ツッコミが出来てしまったのです。
その分もちろんジェットやシャーク達がそれぞれ集合して踊る様であったり、グループが路上でダンスするさまはとてもボリューミーに感じられるものの、どうしても「別に映画でやらなくてもいいしなぁ」と言う違和感ばかりが残りました。
また、男性俳優さんと女性俳優さんの声の発声量にかなり違いがある気がしました。
物凄い女性は音圧も高くビブラートも効いているものの、男性は何と言うかヌケや音圧が1段物足らない声で、ミュージカルらしさと言われるとそこでも気持ちがあまり乗らず、女性陣は中盤、後半辺りから歌い始めるので正直眠さが勝っていたのが前半で、今まで映画館で映画を見て初回眠かったのはこれが初めてです。
その代わり男性俳優さんのダンスはキレがありスピードも早いのですが、服装がこじんまりしていて(基本半袖やタンクトップっぽい服にズボンだけ)やはりあまり映えずに退屈で。
演技もカメラを見て眼圧を与えるわけでもないので、本当にグループ分けのための服装でアクションもそこまで目立たず、何ともなぁという気持ちに。
ただ、舞台ではできない表現として、街のライティングや彩色が基本赤と青なんですね。
夕方や昼時であっても、種族や民族としての対立を青と赤で色設定をきっちり合わせているため、ジェッツとシャークが決戦場に向かうシーンなんかも基本そういうわかりやすい構図で面白かったです。
あと、これはあくまでも本当に個人的ですが、ラブロマンスの側面が強いためか、観客にも女性の割合が基本高く、私自身もラブロマンス、メロドラマといった内容って一番苦手で、その辺りも興味を削いだ要因だったかもしれません。
何かロミジュリっぽいよなぁ、と思って調べていたら本当にロミジュリがベースだったようで、驚きました。
以前にもアリー/スター誕生という映画を見ましたが、歌唱シーンは非常にキレイでシアターのリファレンス音源として使われているのも納得のクオリティなものの本編自体は正直好みではなく「自分は一体何を見せられてるんだろう」といった所感のママ終わった覚えがあり、その傾向に近いものだと思います。
個人的にはそういう感覚でしたが、ただ可能なら見に行ったほうがいいです。
ダンスシーンミュージカルシーン自体のクオリティは高いとも思っていますし、シナリオは好みじゃなくても他の人は好きな可能性はむしろ全然あります。
ラブストーリーが好きな方は是非、映画館で。