「強いメッセージに心を揺さぶられる」だれもが愛しいチャンピオン しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
強いメッセージに心を揺さぶられる
主人公マルコはプロバスケチームのコーチ。しかし、試合中にヘッドコーチと揉め、チームをクビに。ヤケ酒飲んで飲酒運転で事故を起こし、判決として90日の社会奉仕活動を言い渡される。
彼は妻ソニアとも別居中。まさに踏んだり蹴ったりの状態だ。
そして、マルコに与えられた社会奉仕活動とは、知的障害者のバスケチームのコーチだった。
「がんばれ!ベアーズ」型の映画というのがある。
ダメチームが努力の末、活躍する。「マイティ・ダック」しかり、「クール・ランニング」しかり。
本作も、その派生と思っていたが。
意外にもバスケの中身の話題は後景として描かれ、人間ドラマが中心だった。
本作ではバスケチームの話を縦軸に、マルコとソニアの関係が描かれるのだが。
残念ながら、どちらの観点もやや脚本が甘い。
どうしてチームが強くなったのかよく分からないし、夫婦の愛も描写不足、何で彼らは別居するほど対立していたのかも分からない。
だが、そうした欠点を補う素晴らしさが本作にはある。
それはメッセージだ。
ソニアは40歳を超え、夫婦の間に子を持ちたいと望んでいるが、マルコはそのことに消極的だ。
彼は言う。
「そんなに高齢で子どもを産んだら、障害を持って産まれるリスクがある」と。
その会話を聴いていたチームメンバーがマルコに言う。
「僕だって、自分の子が僕みたいだったらイヤだ。でも、マルコみたいな父親は欲しいな」
そしてラスト、チームは勝てなかった。そのとき、マルコの母親は彼に言う。「自分の子が幸せだったら、親はそれでいいのよ」と。
ラスト、試合には負けたがチームのメンバーは大喜び。紙吹雪がコートに舞い歓喜のシーンが続く。
幸せってなんだ?
普通が幸せなのか?
じゃあ、普通ってなんだ?
試合に勝てなくてもいいし、一番にならなくてもいいじゃないか。
「あなた」ならば。
「あなた」が輝くならば、それでいい。
誰もが、かけがえのない「あなた」だし、この世に生まれた、すべての命が輝くのだ。
脚本の甘さも吹き飛ばす、強いメッセージは胸を打つ。
バスケチームのメンバーは、実際の知的障害者たちをオーディションで選んだのだという。
彼らの笑顔も素敵で、本作のメッセージを太く肉付けしている。
ユーモアある演出、物語のテンポもよく飽きさせない。
良作です。