「今後に期待」犬王 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
今後に期待
アイデアはユニーク、テーマも深い、映像もすごいクオリティ。今後のサイエンスSARUと湯浅監督に大きな期待を抱かせる映画だった。
ただ、どうしても「あともう一歩完成度が高ければなあ…」と思ってしまうところがある。
シーン単体でみるとどれも鳥肌もののすばらしさなのだが、シーンとシーンがちゃんとつながっていなかったり、全体の構成のバランスが悪かったりする。原作を読んでないのでなんとも言えないが、設定やストーリーに粗が目立ち、脚本が練りこまれていないように見える。
はじめに犬王たちがロックな音楽で演奏しはじめたところが唐突すぎる。いくつか段階を踏んで試行錯誤した上であの形になった、というなら納得できたのだが…。それに、いくらなんでもこのシーン長すぎる。短い同じ曲調がくり返し流れるので眠気と戦うのが大変だった。音楽がテーマの映画なのだったら、もっとたくさんの曲を作っても良かったのではないか。これでは犬王たちが同じ曲ばっかり演奏しているように見えてしまう。
終盤の展開も序盤の丁寧さに比べると雑に感じる。友有座が解散させられる経緯や、そのときの友有と犬王の反応など、それまでのストーリーや二人の性格とつながっていないようで違和感を感じる。
犬王の設定は手塚治虫の「どろろ」そっくり。まあそれはいいとして、犬王の父親は息子を生贄にしたのにその対価を受け取っていないようにみえるし、なぜ犬王が芸を手に入れると悪霊(?)に差し出したはずの犬王の身体を取り戻せるのか、ということに説明が無い(ようにみえる)。
あと、実は歌のシーンのかなりの歌詞が聞き取れなかった。正直、字幕出してほしかったなー。