「卑しき美」犬王 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
卑しき美
猿楽一座に生まれた異形の犬王。
平家の呪いで盲目となった琵琶法師の友魚。
運命的に出会った2人は斬新な手法で全く新しい猿楽をエンターテイメントとして確立していく。
時代の寵児となった2人のスターの歴史に隠された物語。
こんな猿楽見たことない!(そもそも猿楽生で見たことないけどそれは置いといて)
猿楽の舞台というよりも、これはライブ。
路上ライブからフェス、全国ツアーを経て、遂には武道館まで行ってしまうような彼らの革新的なステージは本当にテンポ良く、こちらもエンターテイメントとして楽しませてもらった。
森山未來も頑張っていたけど正直アヴちゃんの独壇場で、完全に作品自体を食っているパフォーマンスにやられた。
とりあえず、犬王の役をアヴちゃんにやらせようと思った人に拍手。
まるでテルマエ・ロマエのように、現代のライブにあるような演出を当時の技術で表現しているのも興味深い。
かなりデフォルメされているにも関わらず、しっかり室町時代の空気を感じることができるし、前述の通り単にライブを楽しんでいる気分も味わえる。
好き嫌いがはっきり分かれそうな挑戦的な作品だけど、個人的には大満足だった。
歴史の中の消された一面。
友魚は自分の猿楽を守り、犬王はそれを捨てた。
そして友魚は首を落とされ、犬王は生涯寵愛を受けた。
権力者に盾を突けば消され、権力者に上手く取り入れば生き残れる。
あまりにも儚いけどただそれだけのこと。
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驕れる人も久しからず
只春の夜の夢の如し
猛き者も遂には滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ
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後世に当時の人々の熱を伝える平家物語と犬王たちの物語があまりにもリンクしていて胸が熱くなった。