「語り継ぐ者達を、語り継ぎたかった物語」犬王 sasaさんの映画レビュー(感想・評価)
語り継ぐ者達を、語り継ぎたかった物語
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能のこともあまりわからず、ほぼ前知識なしでの鑑賞だったが率直に言うとかなり楽しめた!
琵琶をギターに、歌う魂はロック。
メロディーや舞踊にパターンがあったらもっと面白くなった気もするが、舞台演出などが壮大で見ごたえがある。発声OKの応援上映だったらもっと楽しかっただろうな。
<ストーリーについて>※以下ガッツリネタバレです※
犬王と友有(あえて友有とします)ステージに引き込まれながらも、この物語が描きたいものはなんだろう上映中考えていた。
そして最後のシーンで、この物語は「犬王と友有がいた」ことを語り継ぐための物語ではないだろうかと思い至った。
すぐれた才を持ちながら、歴史にその名をほとんど残さなかった犬王。
そして「なかったことに」されて、成仏できずに琵琶を演奏し続ける友有。
まるで、滅んでしまった平家の亡霊のようではないだろうか。
能と音楽を通して、二人は平家の亡霊が「この世にいたこと」を伝え続けた。
そんなふうに犬王と友有がやってきたことが、まさにこの映画を(もちろん原作小説も)通して600年後の現代に蘇ったようであった。
「自分たちがこの世にいたことを誰かが知るだけで報われる」
「我々の物語を消させはせぬ」
私達がこの映画で彼らがいたことを知ったことで、彼らは報われたのであろうか。
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