「才能あるもの集ば…」犬王 Iマンさんの映画レビュー(感想・評価)
才能あるもの集ば…
ミュージカルなのにこんなに聴くのが苦痛な映画ってあるだろうか。念仏のように何度となく繰り返される音楽に後半に差し掛かったあたりでうんざりする。
琵琶と合わせる曲を現代風に作ろうとした作者大友良英の苦労は理解できるが、あまりにも曲調が時代とかけ離れており、ストーリーに裏付けされた説得力が全くない。クイーンのwe will rock youのようなノリを安直に使ったり、正直何がしたいのか分からない。鑑賞者が室町時代の奇妙な聴衆と一緒に心も体も揺さぶられると思ったのだろか。私はただただ呆気に取られるだけだった。氏と同じように朝ドラを担当した鈴木慶一の座頭市の音楽の方がもっと自由でもっと説得力があった。
ストーリーについても、手塚治虫の「どろろ」などと酷似しており、いつかどこかで聞いたような話。特筆すべき点はない。
アヴちゃんの歌も森山未來の声も松本大洋のキャラデザも湯浅が発揮すべき「ピンポン」の情緒、「DEVILMAN crybaby」の躍動感も、期待したものは何もなかった。コンダクターが機能せず、個々が自由に作業したのが透けて見える。全てが上手く噛み合ってない。映画はシンフォニーでありソロで行うものではない。才能あるものが集えば、名作が生まれるというわけではないということを真に思い知った作品でした。
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